吉祥寺シアターで英国人作家サイモン・スティーヴンスの戯曲、日本初演舞台「彼方からのうた」を観た。

 

********* 演劇サイト より********** 

空気がぴんと張り詰めたように澄みきった冬のニューヨーク。
34歳のビジネスマン、ウィレムの携帯電話が鳴る。遠く離れて暮らす母親からの電話。

弟のパウリが死んだ。アムステルダムに帰ってくるように、と。
突然にこの世界から消えてしまった弟へ綴る手紙。疎遠になっていた家族、見失った愛、向き合いきれずにいる人生を巡る、決して忘れることのできない帰郷の旅が始まる––––。

 

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サイモンからのメッセージ(吉祥寺シアターHP プログラム紹介 より)

 

『SONG FROM FAR AWAY』が日本それも東京で初めて上演されることは、私にとって本当に大切で大きな意味があります。この戯曲は、見知らぬ街角、大都市における愛の可能性について描いた戯曲です。亡霊たちの存在とそこに生き続ける愛を描いた戯曲です。東京は亡霊のいる街。東京は私が愛してやまない街。東京は見知らぬ街角の街。
この戯曲は、音楽がほとんど不可能に思える時の音楽の可能性を描いた戯曲です。東京は音楽の街。この5 年間で私が心から愛するようになった東京という街は、この戯曲にぴったりだと思います。

 

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ニューヨークの銀行でバリバリ働き、今のキャピタリズム世界の勝者であるウィレム(宮崎秋人、溝口琢矢、伊達暁、大石継太が順繰りに演じていく)が置き去りにしてきた生まれ故郷アムステルダムに戻り、家族と久しぶりに対面する。

そうさせたのは彼の弟パウリの死。

図らずもウィレムとは逆の生き方を選んだアーティストのパウリがウィレムにもたらした感情とは。

ウィレムは故郷へ帰る旅で自らに起こった感情の変遷を今はいないパウリにあてた手紙にしたためた。

 

英国で上演された際にはソロパフォーマンスとして一人の男優(Will Young)のモノローグ劇として上演されたこの戯曲。

 

冒頭のウィレムが母からの突然の電話を受け、飛行機に乗り込みアムステルダムへと向かうところから、この主人公の人となりがちょっとした彼のセリフ、態度からよく伝わってきた。

 

秘めた感情を吐露する極めて詩的なモノローグのせりふのその繊細でいて独特な言葉選びに震える。

やっぱりこの作家は只者ではない。いわゆるお決まりの表現、言い回しなどはない、、それでいて人間というものの核心を捉えている。

でもって、その言葉を日本語に翻訳した際にサイモンの口調を見事に復元している高田曜子の翻訳も素晴らしい。

叙情を持ったモノローグ芝居に仕上げている。

 

一人芝居を四人の役者に割り当てた意図(演出:桐山知也)はどの辺にあったのだろうか?

年齢もマチマチの四人の男優に語らせることで、ものがたりの普遍性を強調したのだろうか?

 

途中、マーク・アイツェルの歌を英語で歌う箇所があるのだが、ちょっと自信なさげな歌声であまり聞き取れなかったのが残念。

 

日を追って、自信が増していることを願う。