安田雅弘率いる老舗劇団山手事情社の若手公演シェイクスピアの「夏の夜の夢」を池上にある劇団のアトリエへ見にいった。

演出は劇団員の小笠原くみこ。

 

アトリエ公演用にコンパクトに構成された作品は、追いかけっこやパックのしくじりが主になってしばしその上演で忘れられがちな男女の情欲の暴走がきちんと表現されたおとなのための「夏の夜の夢」で面白く観た。

 

***** 演劇 サイト より******

 

『夏の夜の夢』に登場する妖精パックは、人間にいたずらを仕掛け、かき乱して楽しんでいます。仕掛けられた人間はたまったものではないですが、パックの目には、一喜一憂する人間の姿がより哀れで面白く写し出されているのだと思います。正義感や倫理観とは無関係にいたずらをしかけ、それはまるで無垢な子供のように愛らしい反面、残酷な一面も持ち合わせているかのようです。しかし、不思議とパックのような存在がある世界は、実は豊かなのではないかと思うのです。(構成・演出 小笠原くみこ)

【あらすじ】アテネの公爵シーシアスとヒポリタの結婚式が迫っているところから物語は始まります。ハーミアとライサンダーは、結婚を反対され駆け落ちを決意し森へ向かいます。ハーミアを好きなディミートリアスと彼を好きなヘレナもその後を追いかけます。一方、結婚式の余興で芝居をすることになった職人たちも、その稽古を行なうべく森に出向きます。森では、妖精の王オーベロンと王女ティターニアの喧嘩が勃発。オーベロンの策略で、ティターニアと人間たちに「惚れ薬」が塗られ大混乱に。やがて混乱は収まり無事に結婚式が行なわれます。

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小さなアトリエ(稽古場)に作られた日本家屋様式のシーシアス公爵(高島領也)の屋敷、畳があり、襖があり掛け軸もかかっている。シーシアス侯爵役は森の妖精の世界の王と一人二役を担っていて、彼らに支える妖精パック(渡辺可奈子)は座敷童という設定らしい。確かにおかっぱ頭に童の着物姿のパックは日本の妖怪=妖精だ。

 

森での若い男女2組の恋の鞘当て騒動はその畳のスペースでくんず解れずで行われるのだが、その背後にある襖衝立とアトリエの小さなスペースに作った隠れるスペースを上手く使ってシーンを切り替えていく。

 

90分にまとめた芝居はアテネの職人たちのくだりをギュッとまとめ、その代わりにそこにも男女の恋の鞘当エピソードを盛り込んでいる。

 

原作をコンパクトにしているとは言え、小笠原版の意図はしっかりと伝えていて(いつの世でも人の欲というもののタガが外れると思いもよらぬ混乱が起こり収拾がつかなくなるもの)、見応えのある舞台に仕上がっていた。

これを成し遂げる要素の元にあるのがしっかりとした俳優鍛錬であることは俳優一人一人の強固な演技を見れば一目瞭然。