新宿紀伊国屋ホールで鈴木聡率いるラッパ家の爆笑社会派コメディ「七人の墓友」を観た。

 

2014年に鈴木が劇団俳優座のために書き下ろした戯曲を40周年今回自分の劇団で、劇団員とよく知るゲスト役者たちと上演することになったのが今回の公演。

 

吉野家の母邦子(弘中麻紀)が夫の家のお墓には入りたくない、趣味の朗読会で知り合った友人たち=墓友(はかとも)とみんなで合同で樹木葬にするつもりだと発言したことから端を発した騒動。

年に一度の家族でのバーベキュー大会、一家の長である頑固親父の父義男(俵木藤汰)が意気揚々と肉をふるまっている。彼はいつものように子供たちに(良かれと思って)自分の思いを押し付けているがそんな場で子供たちからの本音が明かされる。長男義和(宇納佑)は自分の元上司で尊敬している義父との同居を計画していて、義男から「早く嫁に行け!」といつも怒鳴られている長女の仁美(岩橋道子)はその気はないと反発、そしてアメリカで暮らしている次男の義明(中野順一朗)はゲイであることをカミングアウトしパートナーである照之(浦川拓海)を家族に紹介する。

子供たちからの意にそわない発言に怒り心頭の義男、そんなタイミングで飛び出したのが思いがけない邦子の「墓友」宣言だ。

茫然自失の義男。

邦子はさまざまな人生を歩んできた墓友たちと、これまでの人生の締めくくりをじっくりと話し合い、子供たちも邦子の墓友宣言以降、思わぬ形でそれぞれの生き方、これからを考えることに。さあどうなる吉野家。

 

といった内容なのだが、吉野家のそれぞれの悩みが観客の気になっていること、興味のあることにズ〜〜〜ムインでドンピシャにピントがあっている。なので、自然と観客がどんどん前のめりに舞台上の話に引き込まれていく、、もちろん居眠りなんてしている場合じゃないほど身に迫ったトピックスで最後まで吉野家、そして墓友たちの意見、決断に興味津々が続く。

10年前の初演時にはまだ新しい言葉だった「墓友」も今ではすっかり浸透し、終の住処の選択肢の中でリアルな候補になっている。

コロナ禍もあり、葬儀も墓もどんどん簡略化、そして個人の希望も多様化している今、まさに今見るべき芝居となっている。

====事実、近年では樹木葬、合同葬、散骨などの代々の家の墓には収まらない形が半分ぐらい(以上?)になっているとのこと。

 

サラリーマン演劇(日本人の大多数であるサラリーマン・一般市民のリアルを描いた芝居)の巨匠だけあって、紀伊国屋ホールに集まった人々にとても近い、リアルな生活がそこにあり、そこにベテラン劇作家ならではのウィットに富んだ会話のやりとり、さらには劇団ならではの阿吽の呼吸がトッピングされて終わってみれば、劇場は大満足の観客で満たされていた。

 

10年前は老舗新劇劇団俳優座での上演で大好評だったとのことだが、今回のラッパ屋舞台とはまたちがったトーンのものになっていたのでは?と想像する。

ラッパ屋のコメディ色が飴色に光っていたのでは??

 

若者芝居とは違って、ラブホのベッドシーンもサラッとこなしてしまうのは流石!