中村ノブヒロ率いるJACROWの新作「地の面」を新宿シアタートップスで観劇。

男優オンリーによる企業スキャンダルもの。

ーーー>ちなみに来年2月の公演では女優オンリーの新作を上演するとのこと。ふむふむ 納得!

 

***** 演劇サイトより *****

なぜ地面師に騙されたのか
誰もがそうくちをそろえる
だったら逆に言いたい
どうしても手に入れたいと
夢にまで見たものが
手に入ると知ったとき
あなたは冷静でいられますかと
恋とはそういうものじゃないかと
これは夢見る企業戦士たちの物語

地面師詐欺事件をモチーフに
企業側の視点で描くビジネスドラマ

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当日パンフにも載っているのだが、2017年に起きた積水ハウスが地面師集団に騙されて五反田の一等地購入で55億円を騙し取られた事件を題材にした芝居。

ポストパフォーマンストークに登壇した作・演出の中村氏によると50%強ぐらいが事実に基づいているとのこと。

確かに当時「地面師(土地の所有者になりすまし売却、多額の金銭を騙し取ること・人)」という詐欺の用語とともに大きな話題となったのを覚えている。

 

ポストパフォーマンストークの様子

 

そのパンフに作者の挨拶があり、最初はその多額の詐欺の手口に興味を持って書き始めたが次第にその事件の要因となったその企業(積水ハウス)の内紛の方に興味が移っていったと書いている。

 

確かに、舞台上で問題になっている事件は大企業相手の地面師詐欺事件なのだが、この芝居が描いているのは大企業内の内紛、トップの人事をめぐっての会社内での対抗部署による争い、椅子取りゲーム(これもこの舞台のキーとして演出で使われている)の話だ。

 

なんで大会社が騙されたのか?それは地面師のやり方の上手さもあるのだろうが、それよりも当時被害者となった会社で起きていた内部のゴタゴタ、自らのポストの奪取を急ぐばかりにビジネスの基本を怠った社員たちの、言ってしまえばその道のプロであるがゆえのある種の奢り、そして会社組織においての上層部への忖度が引き起こした悲劇と言える。

 

そう、社会に不安を広めた事件である一方で、その実のところ会社内の内紛というなんとも茶番がその核にあるという内容で、そのばかばかしさ —所詮は一企業の内情の問題であり、その企業の中で解決してもらわなければならないのが実のところ— から、演出には側からその実態を見た際の可笑しさ、ばかばかしさ、を表現している部分が多々あり(社員同士で相撲をとって、彼らが土俵際である状況を表したり、前述のように椅子取りゲームに見立てた状況をダンスで表したり)、それらが実態に対する批判となっている。

 

ポストパフォーマンストークで観客から「役名が本能寺の変に関わった武将たちの名前になってますよね」と指摘があり、改めて観てみると尾田、明知、木下、、、と漢字が違っているがその通りで、なるほど細部にまで何かメッセージを込めているんだな〜と感心した。

 

オープニングがラストへと繋がる仕掛けも上手く効いていた。