夜は相変わらず大賑わいの下北沢で劇団チョコレートケーキの「白き山」を観た。

 

******* 演劇サイト より ******


「あかあかと一本の道とほりたり たまきはる我が命なりけり」

近代短歌の発展に大きく影響を及ぼした歌人・斎藤茂吉。
戦争は終わったというのに未だ故郷である山形県金瓶にひとり疎開を延長中。
老いてなお悩めるこの老歌人が見失い、なお見出そうとあがき続ける「一本の道」とは?
   

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開幕1ヶ月前ほどに主演俳優の交代が発表され(村井國夫が体調不良のため、緒方晋に交代)たのだが、このとてもインパクトの強いこのチラシのお顔も自然に緒方さんに代わっていたようだ—一見すると見分けがつかない。
 
歌人であり精神科医の斎藤茂吉の晩年を描いていて、二足の草鞋を見事に履きながら、敗戦という世の中の大変革の中、アーティストと医者という両極端の理想とするところを模索しながら最終的に自分を再確認するに至るというドラマ。
 
斎藤茂吉の有名な息子たち — 長男の斎藤茂太(モタさんの愛称で知られる随筆家であり精神科医)(浅井伸治)、どくとるマンボウの愛称を持つ作家北杜夫として知られ、医学博士でもある次男の宗吉(西尾友樹)— 、そして茂吉の長年の秘書で歌人の山口茂吉(岡本篤)と茂吉の食事の世話をする茂吉が疎開先の山形県金瓶の近所に住む農家の主婦(柿丸美智恵)、この五人による劇。
 
いつも通り、作家古川健のリサーチは綿密(ちなみに演出は劇団の日澤雄介)で息子たちの言動にその後のキャリアを彷彿させるヒントがサラリと仕込まれている。
 
状況が状況とは言え、戦争詠み(戦時下に戦争を賛美する内容の歌を詠むこと)を続けた自分と向き合えない茂吉に雄大な山形の山が答えを導く。
 
長男と次男の立場、性格の違いをうまく当てたキャストが見事。
山形弁を自在に操る柿丸の存在が光る。
 
何と言っても昔ながらの利己中な一家の長でありながら、皆が慕う魅力的な茂吉を演じた緒方に喝采を!