劇団ONEOR8の新作「かれこれ、これから」を新宿シアタートップスで観劇 — 余談になるがシアタートップス帰ってきてくれて本当にThank You!!

劇団HPを覗くと作・演出の田村孝裕は昨年2023年度は6本(そのうち5本が作・演出)の外部作品に関わっていたとのこと。

通年何か新しい作品を創作し続けていたということで、ものすごい数だ。

 

ということで、今作は劇団公演として1年半ぶりの新作だそう。

 

****** 演劇サイト より *******

 

とあるシェアハウスに住む10数名の男女が織りなす、必然的に生まれた恋愛にまつわる悲喜交々。人生を賭けたかれこれ、その帰路に立つこれから。だからこそ住人たちは歌い、踊り、泣き、叫ぶ。生きる活力に満ちあふれ、その無邪気さは老いも若きもなく、謳歌する。おそらくここが最後の地だから。

 

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当日パンフに田村が

「本作品を例えるなら”青春恋愛群像劇”。”青春”も”群像劇”も書いたことがない、むしろこれまで興味のなかった題材を書こうと思ったのは、キラキラしている彼ら*と同じ土俵に立ってみたくなったから。年齢を理由に、いつの間にか土俵を下りている自分に気づいたからです。

年齢なんて関係ない。まだまだ、これから。そんな想いで創作いたしました。(略)」と、書いていたので青春群像劇=若者たちのあれやこれやの劇、と勝手に想像していたのだが、そこは田村の実に憎いほどに上手いところ。。

 

確かに「年齢なんて関係」「青春真っ只中」というまっしぐらな高齢者たち!の恋愛青春劇だった。

 

*劇団座長の恩田隆一と劇団員山口森広、冨田直美意外10人以上が客演。

 

まず、シェアハウスと言えば聞こえは良いが、そこは酸いも甘いも噛み分けた人生最終章に足を踏み入れた高齢者たちが暮らす施設。その証拠に彼らのお世話をするための介護を兼ねたスタッフもいる。

 

学校内の恋愛のように、同じところに長くいればそれなりに男女の恋愛話も持ち上がってくるというもの。

そして、人を好きになる、または身近な人が気になるのに”年齢なんて関係ない”。

このシェアハウス—高齢者施設にいる人たちは連れ合いに先立たれたり、また何らかの事情で今は一人になった人たちが多いので、なおさらだ。

 

余談となるが、私が以前暮らしていた英国では、例えば伴侶に先立たれたあと、何らかのスタイルで新しいパートナーを見つけ、それぞれにあった形で(結婚や同居にこだわらず)ともに生きていくというパターンが多い、、、というかその方が多数派だ。

知り合いでも、元カノと再会し、80歳ぐらいになって近所に住み、お互いの間を行き来しながらお茶飲み友達のような関係を築いていたり、、有名な熱々の夫婦だった夫が妻亡き後に新しいパートナーを見つけ、それまでとはまったく違った生き方、世界を旅する(半分リタイヤしているので)ようになったり、、、と人生の終盤で新しい関係性を築いている人がたくさんいる。

個人主義の英国なので、まず子供は成人すると家を出て独立する。そして子も親もそれぞれの家庭で暮らしていく。

 

観察していると、その反面、子供たちは気軽によく親のところに遊びに行ったりしているが、そもそものところでそれぞれの生活スタイルを尊重しているようだ。なので、今回の日本の家族の話のように「いい年をしてみっともない」「この年なのだから、財産目当てなのではないか」などという話はあまり出てこない(お金持ちの家なのではそれもあるかもしれないが)。

 

若い人たち、もしくは中年の浮気だとか、新しい彼女・彼などとは違って、それぞれに快適な生活スタイルが出来上がっているので、無理やり相手の生活圏内に入り込むなどということもしない。

でも、(おしゃべり好きな英国人のこと)お茶を飲みながら話し合う相手は必要!ということで穏やかなカップルがそこここに出来上がるのだろう。

 

劇に戻ると、高齢者たちの恋愛がおもなテーマなのだが、そこにきちんと若者のドライな恋愛観なども盛り込まれている。

 

そして、日本の高齢化社会の問題、自立できない中年の子供たちの問題などもうま〜〜〜く仕込まれている。

 

見ればみるほど、田村孝裕のこなれたうまさが染み出してきている。上手い!!

 

笑いいっぱい、驚きいっぱいで観続けてきて、ラストでホロっと涙が出そうになった。。。憎いぜONEOR8。