小松台東の代表作の一つ「デンギョー!」を彼らのレギューラー劇場である三鷹芸術文化センター星のホールで観た。

 

作・演出の劇団主宰の松本哲也の故郷である宮崎の宮崎弁で書かれた台詞で地方都市のある場所、たとえば今作で言えば地元の電気工事請負の会社宮崎電業の作業員が休憩をする詰所(宣伝写真に使われているのがその詰所のセット)で電工(工事作業員)さんたちがかわす会話から彼らのリアルな日常、社会の状況を描き出している。

 

***** 演劇サイト より ******

缶コーヒーを買って現場に向かう。AM ラジオしか聴けない軽トラ。酔っぱらったら山谷ブルースを唄い泣く。社長が入院した。作業着が俺たちの正装。弁当食ったら日向で昼寝。社長が死ぬかもしれない。初めての給料で食ったのは寿司。 二班に分かれて社員旅行。みんなで撮った記念写真。小指と親指を立てる。社長は小指と人差し指を立てていた。みんなで笑った。俺たちがデンギョーのデンコーだ。

全編宮崎弁で贈る、労働者の物語。

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毎年三鷹芸術文化センターで彼らの作品を上演してくれるので、そのリアルで巧みな社会描写にすっかりファンになってしまった。

 

チラシの束の上の方にはこれからの劇団公演、さらには松本が関わるこれからの外部公演のチラシがずっしり。2024年〜は松本哲也の名前を各所で見ることになりそう。松本の活躍はずっと応援し続けてきた劇場にとっても嬉しいこと、だろう。

 

地方の中小企業で働く労働者たちのリアル、ということで男社会、会社社会の軋轢、裏切り、そして友情、愛情などが主なテーマとなっていることが多く、時に古い価値観の女性像、さらに古い伝統を重んじる姿なども見られるのだが、それも今の日本のリアルと言えるのかもしれなくて、そこも含めてこの劇団の描くリアルが多くの観客の心に新鮮に響いているのだと思う。

 

劇場には男性客の姿も多く、、MONO、劇団チョコレートケーキ、JACROW、TRASHMASTERS、そしてTHE SHAMPOO HAT主宰赤堀雅秋作品(こちらも2024年〜の顔となりそう)などなどの男性客多めの劇団と同傾向で、男性観客のリピーターの開拓を担ってくれているようだ。

 

仲間内の他では通じない冗談を含め、その一見不必要のようなかけあいの中に、この集団の特性、そしてそれを形作っているこの地域の風土、特徴などが丁寧に盛り込まれている。

だからこそリアルであり、そのリアルさがダイレクトに観客に伝わってきて彼らの秘めた思いが台詞とともに、そして台詞の外に現れるのだろう。