シアタートラムでSISカンパニーの別役実芝居「カラカラ天気と五人の紳士」を観た。

 

演出は昨年度の岸田戯曲賞受賞作家で演出家の加藤拓也。

 

加藤は同じくSISカンパニーで2020年に作・演出で新作「たむらさん」を、2021年に安倍公房の不条理劇の傑作「友達」の演出と台本執筆を、2022年に「ザ・ウェルキン」の演出をしているが、SISカンパニーとしてはこの若い演出家なら難題をつきつけても、期待を上回る、そして想定外のものを作り上げてくれるという信頼があるのだと感じている。

 

今回は日本の不条理劇の第一人者別役実の1992年の戯曲—ちなみに別役は五人の紳士が出てくる戯曲を何本か書いている—を加藤の演出で、五人の紳士には藤井隆、溝端淳平、小手伸也、野間口徹、堤真一を配している。

 

***** 演劇サイト より あらすじ ******

ある日、ある所に、「棺桶」を担いでやって来た五人の紳士たち(堤真一・溝端淳平・野間口徹・小手伸也・藤井隆)。
どうやら、五人のうちのひとりが懸賞のハズレくじでもらった景品らしい。
せっかくの景品を役立てるためには、仲間の一人が死んで棺桶の中に入らねば、
と、五人の議論が始まった。
いかに本人が死を意識せず、痛みを感じる前に死ねる方法がないものか、、、と
模索する五人。
そこへショッピングバッグを抱えた女性二人(高田聖子・中谷さとみ)が現れた。
彼女たちは、同じ懸賞の当たりくじの当選者たちだったのだ。
そして、その一等賞の景品とは・・・?

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離れた位置にある棺桶を置く支えの台の上にどうやったらきちんと棺桶を載せることが出来るか?—景品であたった棺桶を無駄にせず使うには??—死人を作れば良い、、だとすればどうやって死人を作るか、、

キャラクターの異なる五人の紳士たちの議論は目的を達成するためにあくまでも真面目に進んでいく。どうせ皆死ぬのだから、棺桶のためにまずは死んでくれ、、となる。

 

電信柱1本があるのみ、そこに人が集まってきて議論を始めるのが別役芝居のお決まりだが、今回の加藤の舞台ではよく見る地下鉄のプラットフォーム(美術:松井るみ)がその場所となっている。

人が日常で行き交う場所、毎日使うそのホームで五人の紳士、そしてそこに後半加わってきた二人の自殺志願の女性が、それぞれの論理から自らの希望を達成するべく、話合い、よく生きるため、。。。そして死ぬために試行錯誤している。

 

役者のマネージメントをしているSISカンパニーならではのキャスティングが良い。

 

何を訴えかけるでもなく、それぞれの思いつき、誰か他の人に対しての提言を一言二言話すだけなのだが、キャラクターが違ってそれぞれにその役割が際立っているため、舞台のやりとりが良い意味で伝わりやすく、そして各人の細かいリアクション(たとえば藤井隆の怪訝な顔つき、とか堤真一のいやに自信満々の言いっぷり、、そして高田聖子の傲慢な態度など)が大いに笑いを誘う。

 

不条理という点で言えば、自然に不条理を体現している野間口の存在が秀逸。