座・高円寺で劇作家、山谷典子率いる演劇集団Ring-Bongの新作「シングルファザーになりまして。」を観た。

 

演出を藤井ごう(先日観たAOC沖縄の「島口説」も彼の演出だった)、そして民藝や文学座、青年座の老舗劇団から役者が集まってきての舞台で、泣きも笑いもOKの安定した舞台に仕上がっていた。

 

******** 演劇サイト より *********

 

服部敏郎(大滝寛)、人気飲食店経営者。60歳にして娘が産まれ、店舗拡大…と張り切っていたところ、妻(大井川皐月)が娘を置いて失踪。家事も育児も一歳したことのない敏郎が生後三か月の娘を抱え…。育児の大変さは自己責任?少子化の進む現代日本での「育児」をコミカルに描きます。

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ここにあるように、シングルファーザーになったレストラン経営者男性が突然乳児の世話をしなくてはならなくなり、経営するレストランで働くコックの王さん(坂本岳大)の紹介で認可保育園に娘、ひなたを預け、子育てに奮闘する様を描いている。

 

この働くママ・パパさんたちの大きな力となっている保育園の様子、そしてそこに子供を預けている超忙しい親御さんたちの事情を詳細に描くことがこの芝居の大きな目的の一つで、そのあたりはかなりリアルに描かれていて— 子供の名前をもとにお互い「ひなたちゃんパパ」とか「〇〇ちゃんママ」と呼び合う、今回の設定の24時間認可保育園では通常の保育園のルールではカバーしきれないところまで、事情に応じて対応してくれている、、、といったことが分かりやすく盛り込まれている。

 

このように、今の子育て支援状況の行政の壁や実際に起きている保育園ができることの限界、など観ていてなるほど〜と思ったり、今はこうなのか、と発見したり。得にこの60歳のシングルファーザーパパ自体がわからないことだらけで事態にあたっているため、この主人公と一緒になって未知の体験=乳児育てを経験していくという劇のつくりが効果的だ。

 

実際、同じような苦労を経験したのだろうか?。。新米パパの苦労に観客席からはすすり泣きの声も聞こえた。

 

この子育て描写の詳細な内容に反して、この事態を引き起こした男女間ー主人公と乳児を置き去りにして家を出た若い嫁—の機微に関してはちょっと大雑把に扱われているな、と感じた。

 

乳児を子育ては絶対に無理と思われる父親のもとに置いて突然家を出る、、というのもあまりにも唐突だし、その後ラストでの母親の変わり身の早さ(いくらそこに新しいパートナーとの関係、理由があるとは言え)にもリアルを感じない。