下北沢本多劇場で赤堀雅秋作・演出の新作舞台「ボイラーマン」を観た。

 

大好きな赤堀作品、チラシは目にしていたのだが開幕していることを知り、あわててチケットをゲット。

 

この名作を見逃さないでよかった〜〜〜、と心底思った。

 

都内の某所(おそらく杉並区界隈)の路地が入り組んだある1箇所、ふきだまり、である夜偶然に巡り合わせた一介の人々のはなし。

 

タイトルロールのボイラーマン(ボイラー関連の仕事をしている男)を田中哲司。彼が路地に迷い込んだ際に何か探し物をしていた葬式帰りの喪服の女を安達祐実、その夫で元ボクサーを水澤紳吾、そのふきだまりにあるちょっと年季の入ったマンションに住んでいる世間にイラついてる女を村岡希美、同じくそのマンションの住人でキャバクラ務めの若い女を樋口日奈、そのキャバ嬢に入れ込んでいる男を薬丸翔、近所に住んでいるちょっと小狡い老人をでんでん、その老人を気に留めて世話をやこうとする小柄な女を井上向日葵、、、そしてそのふきだまり地区の担当警官を赤堀雅秋が演じている。

 

終電もなくなりそうな時間にその場所ですれ違い、ひょんなことから話をし、関わり合った人々を描いたドラマ。

 

近所で邸宅とそれに隣接した古いアパートが(放火により)燃えているという事件があるものの、それは消防車のサイレン、火事を遠巻きに見ている人の言葉、などから知るだけで、実際に火事が見えるわけではない。(この対岸の火事、というのが世界で起きている大惨事に無関心である我々の比喩のように聞こえる。)

 

それぞれが帰れない、帰らない何らかの理由を、わだかまりを抱え、偶然居合わせた人々に不満をぶちまける。

その最たる例が、マンションで人に迷惑をかけないこと、正しい行いをすることを心がけながら暮らす独身の女(村岡)。彼女の中で何かが弾けた瞬間のヒステリックな行動が静かで恐ろしい。

 

他にも人の本当の姿を暴露してしまう老人は火事を見て喜んでいる彼を不謹慎だと非難した人に「これは人間の性、、動物の本能、俺は正直な反応をしているだけ。。」と言い返す。

 

また、妻との関係に悩みながら強がっていた元ボクサーの男がちょっとしたきっかけで号泣、泣き崩れる。

 

一介のちょっとややこしい人々のやりとりの中に珠玉の名言が散らばっている。

 

で、そんな人々を演じている役者たち、それぞれ、全員が素晴らしい。

 

劇場を出たあとも、しっかりと心に残っている、そんな舞台。

 

余談:戯曲掲載のプログラムを販売していたのが荒川良々、、もちろん買いました。いっしょに売っていた赤堀のカレンダーは、、すみません遠慮しました。

 

 

スマイルゼミ(幼児コース)