パルコ劇場で英国の児童文学を舞台化した「モンスター・コールズ」を観た。

 

英国で同作を舞台化しオリヴィエ賞を受賞した英国人サリー・クックソンが日本版の演出にもあたっている。

 

もともと作家シヴォーン・ダウドのアイディアに端を発した本作、ダウドが1500字書いたところで彼女の病気が悪化したため、小説家のパトリック・ネスがそのあとを引き継ぎ小説を完成させた。以前からその児童小説のファンだったサリー・クックソンとアダム・ベックが脚本化し、クックソンの地元ブリストルの、ブリストル・オールドヴィックで2018年に幕を開けたというちょっと変わった経緯があるそうだ。

その後、ロンドン、ウォータールーのオールドヴィック劇場に移して上演され、UKツアーも始まったのだがコロナ禍で上演の中断を余儀なくされた。その後コロナ禍あけから上演が再開され、USAのワシントンでも上演されている。

 

この日本公演ももとは2020年に予定されていたのだがコロナ禍で延期され、今回が日本初演となった。

 

ほとんど裸舞台というセット(美術マイケル・ヴェイル)の左右の脇には役者が待機する椅子が並べられ、その頭上の梁にはなぞの太いロープが何本も剥き出しで吊るされている —>その後、実はこのロープがこの舞台の準主役と言ってもよいほどの働きをすることとなる。

 

主人公コナー(佐藤勝利)と思い病気を患っているその母(瀬名じゅん)が信仰に近い気持ちを持って大事にしている庭のイチイの木。その木の精(?!)がいわゆるモンスター(山内圭哉)だ。

で、母との別れが近づいてくることで否応なし待ったなしの成長をうながされている13歳のコナーにその木の精が世の中の矛盾を説くシーンでその太いロープが束ねられ、木の幹となり、生い茂り、生命力を持ち、その枝の間を木の精がワイヤー=ロープアクションで空中を飛び回る。(これは大変そう!)

 

その他にもロープはさまざまな形容で登場人物たちの心情を表す際に使われ、背面の大型スクリーンに映し出されるイメージと相待ってコナーの不安な心のうちがヴィジュアルとして大きなイメージとなって舞台に表される。

ロープを束ねたり、吊るしたり、ばらけさせたり、、と大きな絵として使い、その上に綺麗なCGを合わせ、見事なイマジネーションの成果をあげている。

 

役者陣の中では2021年の「ブライトン・ビーチ回顧録」でもその舞台俳優としての才能を見せつけていた佐藤勝利が今回も堂々と主役の役目を果たしていて、言ってしまうと、この舞台自体が佐藤の良さを見せる企画と言っても良いほど。

周りを固める俳優たちの安定感もあり—山内、瀬奈、葛山信吾、銀粉蝶ら、パルコらしい良作海外戯曲の上演となっていた。

 

 

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