世田谷パブリックシアター、シアタートラムで横山拓也の新作「う蝕」—演出は瀬戸山美咲—を観た。

 

******* 演劇サイト より *********

土砂に埋もれた島に集められた歯科医師たち
歪んだ会話、不確かな時空の中で彼らの現在地がぼやけていく

「う蝕(しょく)」とは虫歯のこと。
沈丁花が見事に咲き誇るコノ島を襲った天変地異。たくさんの人が地中に埋もれてしまった。歯科治療のカルテを使って遺体の照合をするために、本土から集められた歯科医師と役人。今すぐにでも動き出したいのに、土砂を掘り起こす土木作業員が待てど暮らせどやってこない。荒廃したこの地で、それぞれが言い知れぬ恐怖と不安を抱える中、一人の男が発言する。「この中に、ここにいるべきではない人間が混ざっている」

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オープニング、舞台いっぱいに広がっていた壁が内側からめくれ上がり(これは驚いた!)、いつからか土地のう蝕(土地が徐々に侵食され、陥没していく)が進んできて荒廃したコノ島が実態を表す。

 

政府からの避難命令のためほとんどの人が本土へ移ったあとのこの島で生き埋めになった人たちの身元確認(歯型を確認する)をするという使命のため残っている数人の歯科医と本土からの役人。。。と思っているうちに、会話から彼らの素性がじょじょに明らかになっていく。その中には”いるべき””いるはずではない”人も。

 

パンフレットの冒頭に芸術監督白井晃の挨拶が載っていて、その中で荒廃した場所という舞台は新年の能登半島地震を想起させるのでは?ということで上演するかどうか協議した、とあったが、まあそうれはそうだろうな、と感じた。舞台の写真だけを見たら、これって大災害があった土地?と思ってしまうかもしれないからだ。

しかし、実際にはコノ島のう蝕に関しては、誰もその原因はわからず、随所に不条理さが立ちこめている。

 

普通の人々の日常生活での出来事、家族や近しい人たちの間の諍いを題材にした作品が多い横山の新境地といったところだろうか。不条理な設定にミステリアスな会話、、ちょうどこの日の午前中にイキウメの前川知大さん関連の仕事をしていたため、、前川化か?!という思いが頭をよぎった。

 

いつもの横山ぶしの方がしっくりしているように感じたが、そんなことは大きなお世話なのかも。