新国立劇場の小劇場The Pitで新国立劇場演劇研修生たちの卒業公演、テネシー・ウィリアムズの一幕劇の3本立て舞台「流れゆく時の中に」を観た。演出は研修所所長の宮田慶子。

 

研修生たちの日頃の成果をお披露目する公演なのだが、その前にまずは上演作品のチョイスが良い。

 

昨年11月に観た「君は即ち春を吸ひこんだのだ」では昭和初期の児童文学作家、新美南吉の生涯を描いた原田ゆうの戯曲ということで、研修生たちが生まれるずっと前の日本人たち、中にはかなり高齢の人物を演じている研修生もいて、チャレンジであっただろうと感じたのだが、今度は海外の、それも入りくんだ人間の内心を描いたテネシー・ウィリアムズの戯曲、これはこれでまたまた難題であったのだろうと推測する。

 

 
****** 演劇サイト より それぞれのあらすじ ********
『坊やのお馬』
アメリカの大都会、工場地帯にある安手のアパートで暮らす、工場労働者のムーニーとその妻ジェーン、二人の間には乳飲み子がいる。ムーニーは夢のない、機械のように働くだけの生活に苛立ち、落ち着きがなく、早朝から台所を歩きまわっている。現実生活のやりくりに精一杯のジェーンと、自由にあこがれるムーニー。二人は永遠に会話がかみ合わない。ムーニーは、この泥沼の生活から脱して、以前、カナダに住んでいた頃の木こりの生活に戻ろうと決意する。

『踏みにじられたペチュニア事件』
ボストン文化圏のなかにあるマサチュセッツ州のプリマンプロパーという町で、「シンプル小間物店」を経営しているミス・ドロシイ・シンプル。早朝、彼女はその店を開けひどくいきりたっていた。大事に育てたペチュニアの花々が踏みにじられていたのだ。警察に被害を訴えるドロシイ。そこに、若い男が自分がやったと告げにくる。ペチュニアを踏みつけただけでなく、ドロシイの心のなかにも土足で入り込んでくる男。次第にドロシイはこの男の言う通りに行動する。

『ロング・グッドバイ』
アメリカ中西部の大都市の真ん中にあるうらぶれた共同住宅で売れない小説を書いて暮らすジョー。彼は生まれてから23年間ずっと暮らしてきたこの部屋に、別れを告げようとしていた。治療費の支払いに怯え300ドルの保険金を残して自殺した母。貧しいことに耐えられず家を出た妹。毎晩ソファーに座っているだけだったが突然行方をくらませた父。運送屋たちが思い出の家具を運び出すと、過去の記憶が甦る。

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表で起こっていることだけでは計り知れないそこにいる人間たちの内心、思い通りにならない人生にどう向き合うのか、、といった誰もが持つ生きていく上での割り切れなさをどのように表現するのか。。。正直、そこにまで至っていない、表面的な演技も見られたが、、とにかく、彼らが役者というものに真摯に取り組んでいることは伝わってきた。

 

このような勇気ある挑戦には大いに拍手を送りたいと思った。