下北沢駅前劇場で石川湖太郎率いるサルメカンパニーの「文明開花四ツ谷怪談」を観た。

 

福田善之(先日、同作家の「長い墓標の列」を観たばかり)による4時間の長編を木村昴(当日パンフによると、石川もその台本カットの作業に関わったようだ)が2時間超えにまとめた書き下ろしの新作とのこと。

タイトルにあるように、文明開花(封建制度が終わり、新しい価値、方向性を模索した明治初期)の時代に起きたある夫婦の悲劇で、後半は四ツ谷怪談(お岩さんが夫の伊右衛門に毒をもられて顔を崩され殺されたあとに幽霊となってでた怪談話)を模したストーリーとなっている。

 

******** 演劇サイト より *********

時は明治初年。廃刀令が布告され、侍は腰が軽くて落ち着かない。相次ぐ士族の反乱。今一度のご一新を探る士族たち。西郷隆盛が起った。九州で始まった戦争は人々を、女たちを巻き込み・・・?

福田善之(92歳)が井村昂(76歳)の協力を得て、20代のサルメカンパニーとともに大南北(71歳)の名作に挑む文化文政を歴史の転換期に飛翔させた書き下ろし新作!
全編生演奏でおくる!

 

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ガラガラポンの維新で先が読めない世の中のそれからを夢見る若者たちが暴走し、駆け回る中で一人世の変動を静観し続ける主人公鍵谷伊右衛門を演出を担当している石川が演じていて、前述にあるように後半ではその伊右衛門と妻の希和(Wキャスト:井上百合子、小黒沙耶)との夫婦の愛が描かれることとなる。

 

駅前劇場の舞台空間を目一杯使って立ち回り、宿敵を追いかける役者たち(多くがオーディションで選ばれたとのこと)の動きがすごい。たまたま最前列に座ったこともあり、時に役者の剣が飛んでくるのではないかとヒヤヒヤするほどの大迫力。。。このスピード感と勢い、もちろん間違って客席にはみ出るようなことはない、間合いをはかり計算された彼らの動き、ひと昔前、あっという間に演劇界を席巻した夢の遊眠者の舞台のスピード感を彷彿とさせた。

 

そこに福田のVividな台詞がのれば怖いもの無しと言ったところだろう。

 

サルメカンパニーの売りの一つである(HPからの情報)ライブ演奏付きの舞台で、四人編成のバンドが幕間の間も演奏をしてくれていたのがありがたく、印象に残った。

 

当日パンフに演出家石川湖太郎のことばが載っていて、

「福田先生から「君はいつか伊右衛門をやるべきだ」と言って頂き、「伊右衛門をやるなら先生が書いた伊右衛門が良い。」とわがままを言いました。。。。たくさんの方のお力添えがあり、それが実現しました。こんなに嬉しいことはありません。」とあった。

 

世代を超えた交流、いつもとは違った顔が集まったコラボが作り出した舞台。

 

文明開花のように、まだ見ぬ未来に向けての新しい出会いには可能性が詰まっていると感じた。

 

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