冬晴れの静岡でリヒャルト・シュトラウスのオペラが有名なフーゴー・フォン・ホーフマンスタール作「ばらの騎士」をSPACの芸術監督宮城聰と寺内亜矢子が共同演出した芝居—シュトラウスのオペラとは違った挿入歌とオリジナル音楽を根本卓也が担当—を観た。

 

******* 演劇サイト より *********

スキャンダラスな色恋沙汰は抱腹絶倒の喜劇?!
劇団SPACが総力をあげて新年あなたを笑わせにかかります!
不朽の名作オペラとして知られる『ばらの騎士』。その舞台が華やかな鹿鳴館時代の日本に置き換わり、宮城聰、寺内亜矢子の初共同演出と、古典から現代音楽まで自在に操る根本卓也の音楽で、軽快な演劇作品に生まれ変わる。俳優たちの生演奏にのせ、貴族たちのドタバタラブコメディが初笑いを誘う!
----------あらすじ
若い愛人オクタヴィアンとのひと時の恋に浸る元帥げんすい夫人だが、その時間はいつまでも続かないと知っている。一方オクタヴィアンは、花嫁に銀のばらを届ける婚約の使者“ばらの騎士”に任命され、かなりウザめなオックス男爵と結婚させられる娘ゾフィーと出会い・・・。浮気?政略結婚?一目惚れ!?略奪愛!?気になるこの恋愛事情、一体誰が諦め、実らせる・・・??

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初日だったため、宮城、寺内、根本が登壇したアフタートークを開催していたのだが、そこで宮城は今回の企画に関して、往々にして、たとえばシェイクスピアのような古典戯曲では男性が悩んだり、悩んで成長したりといった話が多くを占める中、オペラでは女性が悩み話の中心となる場合も多々あることに気づきそれではそのような話をやってみようと思った、と話していた。さらに、悲劇を得意とする芸術家は時に喜劇に挑戦したくもなるものだ、とも語っていた。

ちなみに共同演出の役割分担としては大まかに言うと、当初はオペラリゴレットの台本を舞台劇に仕立てる台本作りを宮城が、俳優の演技・動きの部分を寺内が担当したということだった。

 

ということで、今回はシュトラウスがモーツァルト的オペラを目指した恋の鞘当てコメディを、まずはシュトラウスの後期ロマン主義音楽の美しいメロディを取り払ったあとにホーフマンスタールの戯曲(ストーリー)をあらためて舞台にのせるという作業を行なっている。

作曲の根本はこの演劇舞台化というSPACチームの要望にあわせて、あえて(オペラ的とは反対の)アンティクライマックスな曲調で舞台のストーリー展開を邪魔せず、バックアップしたと言う。

 

そのような工程を経て立ち上がった舞台は単なる上流階級の男女の恋愛ゲームにとどまらず、元帥夫人(本多麻紀)の”女が年を取ると言う現実”を実感する独白とともにかなりリアルな、今でもいたるところで見られる男女の恋愛模様の話となっていた。徐々に暮れていくラストシーンが心に刺さる。