新宿シアタートップスで長塚圭史率いる阿佐スパ(阿佐ヶ谷スパイダース)の新作「ジャイアンツ」を観た。

 

かなりオープンな団体形態をとっているらしく、いつのまにかナイロン100°Cの村岡希美やさまざまな場で活躍している中村まこと、富岡晃一郎なども阿佐スパの団員として顔を連ねている。

 

ジャイアンツは野球関連ではなく、家族構成の中で”ジャイアンツ”的な立場にある父親のことで、その絶対的な存在であった父(中山祐一朗)がいつの日か家族の中で裸の王様になっていたことに気づかず、いろいろ大切なものを失ったあとになって記憶の中の出来事を確かめながら自分の過ちに気づいていくというものがたりになっている。彼が作りだした産物なのか、、目玉探偵(長塚圭史、伊達暁、(その秘書)李千鶴)らが彼の人生の再確認の手引きをする役として随所に登場、不条理の仲介人として奔走する。

 

******* 演劇サイト より ********

 

息子が住んでいた街を、その家族・友人たち、また時にいるはずのない息子本人と対峙しながら巡ることに。
この町は妄想なのか、それともハッキリと現実なのか。
現実世界から一歩踏み外し、未知なる思い出の迷宮に迷い込んだ(あるいはそう思い込んだ)者を奇想の手管で案内する目玉探偵社の力を借りて、どん底から這い上がる男の冒険譚。

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長塚が2014年にハロルド・ピンターの「背信」を演出した際に思ったのだが、ピンターの人間が行う記憶の追跡というテーマと長塚の劇作のテーマには似通っているところがあるなということ。

 

自己の思い込み、またそう思いたいという潜在意識により記憶が迷宮にはまり込んでしまい、思いがけない事態に出くわす、、そんな人間存在の矛盾を目玉探偵のコミカルなツッコミを交えながら描いている。

 

いやに確信を持って発言する清掃会社の社員の東(中村まこと)、そして終始自身がなく迷い続けている父(中山)、、もちろん何を言ってもきちんと不条理笑いに落としてくれるお隣の大島(村岡)が頼もしい。