新宿シアタートップスで劇団青年座の公演、劇団チョコレートケーキの古川健が書き下ろした新作「同盟通信」を観た。

 

史実を今の視点で検証、確認しなおした作品が人気の古川の戯曲だけあって、劇場は年齢が高め(もちろん若者もいたが、割合としては年齢層は高め)の男女で満杯状態だった。

 

****** 演劇サイト より ********

 

同盟通信社は、新聞聯合社(聯合)と日本電報通信社(電通)が合併して1936年に発足した。同年12月の同盟通信の西安事件のスクープは、通信記者たちを大いに勇気づけた。と同時に、迫りくる戦争の足音が不吉な予感を漂わせる。翌1937年、盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が勃発。この頃から同盟通信は陸軍と密接な関係を持つようになっていく。そして現場の記者たちは「報道」と「宣伝」の間で激しい葛藤を繰り返す。外電を傍受した記者たちは日本の先行きを危惧し、海外の情報を武器に戦うのだが、ついに対米開戦が決定されてしまう。やがて同盟通信は、国策の為に国民を扇動する宣伝機関に堕ちていった。「報道」か「宣伝」か…戦時下の通信記者の視点から戦争報道の真実を描く。

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戦時下で徐々にその公平性、そして真実の報道から遠のいていった国際通信社(今の共同通信や時事通信)同盟通信社内の当時の状況、社員たちの葛藤、それぞれ違った立場からの戦争報道のあり方をめぐる対立などを描いている。

 

まさに古川戯曲の真骨頂とも言える一人一人の戦争責任を問うた力作で、最後までその事態の行く末を目を見開いて面白く観た。

 

戦中という非常事態の中、メディアに蔓延、浸透していた権力への忖度、そして右に倣えの思考回路を炙り出した本作を今上演する意義は明白だ。この問題を振り返ることにより、まさに今、大いに世間の注目を集めている報道のあり方、メディアの役割を考え直すことを促していると思われる。

 

劇中の展開はいくばくか想定内(歴史に準じたフィクションなのである程度はしかたがない)、ディベートも教科書的ではあるものの、観劇後に観客たちにさまざまな問題提起をしているところで、十分に観るに値する芝居だと思う。