世田谷パブリックシアター(SEPT)で夏休み子供向けプログラムせたがやこどもプロジェクト2023の一つ「メルセデス・アイス」を観た。

 

今回演出を担当しているSEPTの芸術監督、白井晃が好んで翻訳上演している英国人作家フィリップ・リドリーの1989年の児童小説を舞台化した作品。

 

これまでに白井はリドリーの戯曲を5本演出しており —「ピッチフォーク・ディズニー(2002年)」「宇宙でいちばん速い時計(2003年)」「ガラスの葉(2010年)」「マーキューリー・ファー(2015年、2022年)」「レディエント・バーミン(2016年)」— 特にここにあるように世界の終末とも思えるディストピア状況下での人々の狂乱を描いた「マーキューリー・ファー」はその極限状態を見事に描いた演出、そして若い役者たちの熱演もあり大きな話題となり再演も果たしている。

 

「メルセデス・アイス」って何のことなの?と思いながら観ていたら、まさかの人名、それもマジで?とツッコミを入れたくなるあのドイツの高級車メルセデスからとった名前、、、でもって、ラストのオチがそうなるんだ〜と、さすがにバイオレンスとぶっ飛んでいる作風で人々を魅了してきたリドリーの小説だけあるな、という印象。

 

***** 演劇サイト より あらすじ *****

 

メルセデス・アイスは影のタワーのことならなんでも知っている「影のタワーの王子」。
ある日、世界は黒と白の色のない世界に。
おもちゃのロボット、ドールハウス、お菓子やチョコ・・最後に欲しかったのは、「色」でした。
第1部| 母ドールと父ハロルドの間に生まれた女の子ロージーと、母サンドラと父ヨゼフの間に生まれた男の子ティモシーは出会い、成長します。ロージーとティモシーは“影のタワー”が大好きでした。

第2部| ロージーとティモシーは結婚して大好きな影のタワーに暮らしています。
喧嘩をしたり、太ったり、いつしか毛が薄くなったりしながら暮らす二人。やがてロージーとティモシーの間に男の子が生まれます。名は、“メルセデス・アイス”。

第3部| 時が経ち、影のタワーは汚れて朽ちていきました。
ミセス・アイスはメルセデス・アイスを溺愛し、求めるもの全て与えるようになりました。
メルセデスと隣室に住むヒッコリーは共に成長し、古びたタワーの中で一緒に遊ぶようになりますが、自分を「影のタワーの王子」だと思っているメルセデスのワガママにヒッコリーは振り回されてしまいます。
ある日、甘やかされたメルセデスを諫めたヒルダとミセス・アイスは仲違いします。この二組の家族のもめごとが、最後、タワーの大爆発へとつながっていきます……

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子供向けプログラムということで、会場にはキッズと親子という観客が多く訪れていて、演出はそんな彼らにちょっと変なお話を聞かせる、といった趣向になっていた。

 

ものがたりの舞台となっている”影のタワー”=高層マンションの建設は段ボールを高く積み上げていく形で進行ー> 実はこのアイディアがクライマックスのシーンで活きてくるのだが、その周りにはドールハウスのような小さな家々が建ち並び親子3代が暮らす街が舞台上に広がっていた。

 

 

— かわいらしいミニチュアの家が並ぶ街のセットは終演後に撮影可となっていた。

 

MC役として松尾諭が主となってお話を進める中、ナイトメアー(悪夢)のような影のタワーの住人たちのあくなき欲=夢のお話が展開していく。

 

1989年執筆ということで、今だったらコンプライアンスに触れるだろうな、と思うような容姿を嘲笑う表現がちらほらあったのはご愛嬌ということで、、、(それでも、やはり今耳にするとちょっとイヤな気分になる)。

 

結構グロくて、はちゃめちゃな話なのだが、前の席に座っていたキッズたちは受け入れていた様子。。これぐらいはなんてことないのかも。

 

アニーの主役だったという(その後ミュージカルや舞台で活躍中)豊原江理佳が魅力的な孫娘ヒッコリーを演じていて印象に残った。