神奈川芸術劇場(KAAT)で2022年の岸田國士戯曲賞受賞作、山本卓卓(すぐる)作・演出の「バナナの花は食べられる」を観た。

 

******** 演劇サイト より *************

「僕は人を救いたいんだ・・・それって恥ずかしいことかな?」
 

フィクションで現実を乗り越え生きていこうとする人々の人情劇。
第66回岸田國士戯曲賞受賞作、堂々の再演!

2018年夏。33歳、独身、彼女なし、アルコール中毒、元詐欺師前科一犯の“穴蔵の腐ったバナナ”は、マッチングアプリ・TSUN-TSUN(ツンツン)に友達を募る書き込みをする。
出会い系サクラのバイトをしていた“男”は、釣られているとわかりながら課金してきたバナナに興味を持ち、彼と会ってみることにする。

「人を救いたいんだ・・・」と言うバナナと男はいつしか、僕/俺「ら」になり、探偵の真似事をしながら諸悪の根源を探しはじめる。

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岸田戯曲賞の候補になった時に戯曲を読んで、チャラっぽく流れる言葉遊びを楽しむ前半から徐々にトーンを変えて核心に突入していく後半への流れが秀逸だなという感想を持った。

 

実のところ、コロナ禍で劇場での上演が難しかった時期に、映像配信という形でスタートをきった今作。

コロナ禍で劇場へ行けない中、YouTube配信演劇を見始めたにも関わらず、その先に演劇作品としての上演があったことを聞き逃し、初演は観ていないこともあって、今回こそは絶対に、絶対に観るぞ!と心に決めKAATに足を運んだ。

 

3時間強に及ぶ大作舞台は戯曲の素晴らしさそのもの、否、淀みなくスピーディーに展開される役者たちの演技、キッチュな舞台セット、あちらこちらに飛ぶ時空間を自由に操る演出アイディアで、そして何と言っても主人公の穴蔵の腐ったバナナくん(埜本幸良)が映像画面の中ではなく目の前で弁舌をふるってくれているのを観る楽しみが爆発していた。

 

巷のレビューの中に初演とは変わっていたというコメントを見つけたのだが、それは初演から流れた時間(コロナから脱or With コロナ)がそうさせたのだろうと考える。

 

コロナで社会の様子、価値観が一変したときにひゃら〜〜〜っと登場してくれた腐ったバナナくん、、普通時に聞いても恥ずかしくなるような宣言 ”人を救いたい” このシンプルな言葉を臆せず放ってくれたバナナくん (まるでブルーハーツの「人にやさしく」のよう)、それを貫いてくれたバナナくん に心を撃ち抜かれたような気持ちになった。

 

彼の信じるところに日本は、社会は救われるのかもしれない、、が反面、しょーもない(と言ってしまったら身も蓋もないが、少なくともそこに実りはない)恋愛に玉砕していたりする、、、それが人間。

 

そう、これは隠し立てせずに全てをさらけ出した純粋(ピュア)な男のものがたり。そんな人間のは・な・し。