チェルフィッチュの岡田利規が2021年9月から始動しているプロジェクト、日本語を母語としないノン・ネイティブの役者たちとの舞台創作の試み、その成果発表の第一弾となる「宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓」を吉祥寺シアターで観劇(8/5)。

 

その前にリハーサル見学をした際のレポートがこちら↓

 

 

 

実は8/3のゲネプロを吉祥寺シアターで見学(プレス関係者など50人ぐらいが見学)、きっちりと本番さながらの舞台を客席から見させていただいたのだが、その舞台がとても刺激的、かつ純粋にとても面白かったので — チェルフィッチュ、もしくは岡田利規が海外、特にヨーロッパで人気であるのは彼のユーモアのセンスがウケているからだと確信した — 、さらに言えば、また同じメンバーによる再演という機会があるのかどうかもわからなかったので、客が入った状態での舞台、そしてまたあの不思議で貴重な観劇体験をしたいという強い欲求から8/5に再度観劇することとした。

 

上記のレポートをお読みいただけたらわかると思うが、地球外知的生物に言葉を習得してもらうというミッションを追った国籍の違う乗組員たち4人が高知能ロボットと宇宙を旅している間におきたディスコミュニケーション、宇宙から地球のことを考えそのことについて交わすディスカッション、またさらにそこに地球外知的生物が加わったことで何が起きたか、、などなどを描いた内容となっていて、それらの宇宙での出来事(当然のことながらフィクション)は全て日本語のセリフで語られるという芝居となっている。

 

ゲネプロの際にも感じたことだが、本番の舞台を観てさらに強く感じたことは、この劇を観ている観客たちの集中度の高さだ。舞台で起きていること、しゃべっているセリフから何かを掴み取ろうと客席は良い意味での張り詰めた空気に包まれていた。

この集中度の要因としてはおそらくこれまで観たことのない新しい何かがこれから目の前で起ころうとしている、ということに対しての期待から出たものだと推測する。いわゆる既存の、見慣れているようなものとは違った何か —たとえそれが期待していたものと違ったとしても —を目撃するのだろうといった未知のものに対しての好奇心、興味だ。

確かに、演劇の現場=舞台において、シアターゴーアーズ(定期的に観劇をしているような人々)であればあるほど、そのような目から鱗の経験をするのは貴重であるのだと思う。

 

実際、舞台上にはフィリピン、ドイツ、ハンガリー、中国出身のノン・ネイティブの俳優たちがいて、岡田の細部にまでこの上演形式にこだわった戯曲を話し、演じていた。

 

 

ノン・ネイティブであることがマイナスにはならず、かえって上記にあるように観客の目と耳の感覚を鋭敏にさせていたし、さらに言えばノン・ネイティブであるという環境を上手く取り入れて、観客サイドになかなかにこみいったクールな笑いを起こさせていた。— 例えば、日本人の話法を第三者的な立場で検証することに一役買っていた。

 

役者たちが登壇したアフタートークを聞いて驚いたことに、中国人の徐秋成氏などはアーテイスト(映像・ゲーム)ではあるが役者経験はなく、今回が初めての舞台だと言うことだし、フィリピン人のネス・ロケはフィリピンで劇作家、女優として活動しているとは言え、普段話す日本語は舞台で話していたようなレベル(ペラペラと話していた)には及ばない、とのことだった。

 

稽古見学の際に岡田利規がこの4人のメンバーを選んだポイントとして、「この4人のバランス、構成が良いと思ったから」と話していたのだが、確かにそれぞれの日本語のセリフ回しも含め、カラフルで、そして重なるところがなく、とてもバランスが良いと感じた。

戯曲の絶妙な仕掛けとバランス、そしてキャスティングのバランス、、と演劇の「生」を最大限に引き出す岡田のセンスにただただ脱帽するばかりだ。

 

Kyoto Experience 2023にも参加するということなので(上演期間:9/30~10/3)なので、日本演劇の今後を予見させるこの舞台、ぜひ「今」目撃者となってもらいたい。