NT制作演劇舞台を映像にしたNational Theatre Liveで昨年度のオリヴィエ賞で5冠に輝いた(主演男優賞(Hiran Abeysekera)、新作劇賞、舞台装置デザイン賞、照明デザイン賞、助演男優賞)「LIFE of PI」を池袋のシネリーブルで観た。

 

これぞ演劇界の最先端をいく英国演劇が世界に誇る舞台!と言い切れる素晴らしい舞台(を映像化したものだったが)だった!

 

ちなみに前述のベスト助演男優賞を贈られたのは虎=リチャード・パーカー!のパペットを操作していた7名の縁の下の役者たちとのこと。

 

来週ぐらいまでは確実に上映しているようなので、ぜひぜひ自分の演劇好きを再確認するためにも観てほしい。

 

カナダ人作家ヤン・マーテルの小説(2001年)を2012年にまずはハリウッドが映画化し、アカデミーで11部門にノミネート、4部門でオスカーを手にしている(こちら公開時に鑑賞していて「すごい話だな」と堪能したのを覚えている)。

 

オスカーで視覚効果賞を受賞しているだけあって、そのCG技術が大いに評価され実際作品の成功に大きく寄与していたのだが、その意味ではこのNT舞台版ではそこの部分を全て人がやっている(パペットを人が舞台上でライブで操っている)というところに最先端技術のCGを超えたリアルと迫力を劇場空間に生み出していたように感じた。

 

パペットによる生き物たちの臨場感、そこに美しい海中、大海原の映像があわさって、限られたスペースであるはずの舞台を、イマジネーションの力で何倍もの大きさの世界に仕立て上げていた。

 

もちろん主演のAbeysekeraの熱演が素晴らしいのは言うまでもない。

 

多民族国家の英国、その中で演劇に携わる人たちの多様性ゆえこのような舞台が生まれるのだな、と。アジア系でもカリブ系でも、アフリカ系でも、ラテン系でもそれぞれが主役となるストーリーを、そのルーツを持つ英国人たちで上演することができる、世界はそのような方向へ進んでいるんだな、、と。日本がそのようになる日は来るのだろうか。

 

一幕と二幕の間の休憩時間に演出家Max Webster(以前日本でパルコ劇場制作の「メアリー・スチュアート」を演出)、脚色Lolita Chakrabarti、そしてパペット&ムーブメント演出のFinn Caldwellの3人に制作現場、苦労などについてインタビューをしていたのだが、彼らの会話からこの作品がどれほど多くの時間を惜しげもなくかけて作られたものなのか、そして彼らは作品作りとはそういうものなのだと信じているということが伝わってきた。

やっぱり、長く長く愛され続けるような、劇場の財産となる作品を作るためには時間をかけるのは必然だろう、と。

 

それを忍耐強く待てるかどうか、その出てくるものを信じて待てるかどうか、、そのあたりがキーとなってくる。