神奈川芸術劇場(KAAT) 中スタジオで平原慎太郎率いるOrganWorksの新作「漂幻する駝鳥」を観た。

 

 

****** カンパニー HP より *********

天空からの目線。幼い頃から感じていた全てを見透かすような目線。

かたやサバンナのど真ん中、青年を乗せ水場を目指す駝鳥。

渇いた体を潤す水を探す駝鳥の目線。

その二つの目線は決して交わらず、駝鳥は何も見つけられず歩き続ける。

駝鳥は歩く。

背中に乗せた青年のことも忘れたまま。

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作・演出・振付・出演の平原慎太郎と同等にクレジットされているのが舞台美術の冨安由真。

その扱い通りに、今作ではダンスの他にその空間、そして空間美術が大きな役割を示している。

まず、あれ?と思わせるのが舞台空間の作り方、観客は黒い箱状の劇場空間の上部に案内され、その上から箱の中をくり抜いたような下方に作られた舞台を覗き込むという、いつもとは違った視線でのダンス鑑賞となる。

その箱の底に造られた冨安の異国情緒あふれる美術が素敵だ。

 

 

例えばこちらの屋根がない家のセット。舞台空間の一角に置かれているのだが、初めは四方に壁があり、中があまり見えない構造になっている。それが途中からダンサーたちが壁板を運び出し、スケルトン状態となり、中での様子も見えてくると言う展開に。

 

 

上演後、舞台美術の撮影可能と言うことで、下に降りてこれらのセットを撮影した。

近くで見ると、その繊細な小道具のチョイスにため息が出た。美しい!

 

10人ほどのダンサーが入れ替わり立ち替わり登場して5つのチャプターを綴っていくのだが、今回のテーマが「渇き」と言うことで激しくその水分の渇きを癒すために欲求する人々、戦場で生命のギリギリのところの渇きを訴える男、などなど何かに手を伸ばしながら抗う人々が描かれていた。

アンティーク調の調度品などから中東の乾いた風土を思い描いた。

 

このところKAATではただ上演を鑑賞してもらうだけでなく、今回のように美術を紹介したりといった舞台芸術を包括的にとらえた上演サービスが多いようだ。

 

帰り際に、週末とあってロビーに設置されたテーブルで談笑する学生などの姿も目にしたし、、長塚圭史の劇場を多くの人に活用してもらう、といったミッションが浸透しつつあるのでは。