夜は南下して三軒茶屋へ移動、イスラエルの振付家・演出家で日本でも何本か作品を作ってきたインバル・ピントの新作、居間にいた女性がどんどん”素敵な悪夢”の世界に引き摺り込まれていく様を描いた「Living Room」を観た。

 

******* 演劇サイト より *****
イスラエルを拠点に世界中で活躍する振付家・演出家のインバル・ピントが、最新作とともに世田谷パブリックシアターに帰ってきます。
当劇場では、2005年に『オイスター/Oyster』と『ブービーズ/Boobies』、2012年には『ボンビックス モリ with ラッシュ』と『ゴールド・フィッシュ』(いずれもアブシャロム・ポラックとの共作)を上演してきました。ダンスのみならず、映像や舞台美術、衣裳デザインまでをも手がけ、日本人アーティストとのコラボレーションも数多く、ミュージカルの振付・演出などユニークでチャーミングな舞台で日本の観客を魅了しつづけています。
世田谷パブリックシアターでは実に10年ぶり、インバル・ピントが長年温めてきた珠玉のデュオ作品を上演します。
----------

パンデミックの中で生まれた最新作『リビングルーム』
羽のように軽やかで繊細なダンスに魅了される特別なステージが開幕します

『リビングルーム』はパンデミックの最中に創作されたインバル・ピントの最新作です。インバル・ピント自身がデザインを手がけたオリジナルの壁紙に囲まれた舞台は、どこかノスタルジックで、でも近未来のような、キッチュで不思議な《リビングルーム》。
出演は、長年創作を共にしているダンサーのモラン・ミュラー、ピントの処女作にも出演し、近年ヨーロッパを拠点に活躍してきたダンサー・振付家のイタマール・セルッシ。
チェリストで歌手のマヤ・ベルシツマンがオリジナル楽曲を提供しています。
羽のように軽やかで繊細なダンスに魅了される、インバル・ピントならではの特別なステージが開幕します。

****************************

 

作品の後半になって男性が居間にあるアンティークなチェスト(戸棚)から現れる!—ぬるっと滑り出てくる— のだが、それまでの作品の大部分はキュートな女性ダンサー、モラン・ミュラーのソロが受け持ち、前述の”素敵な悪夢”的な世界を身体全部を使って表現している。

悪夢的と言ったのは彼女の身体が思いもよらぬ方向に引っ張られ、伸びたり、テーブルや壁のある点に磁石の反対極のように引っ張られ制御不能に陥ったりするからだ。

その何らかの力(オカルト映画の霊に操られる人間のように)によって普通に歩いたり椅子に座ったり、テーブルに手をついたり、といった自然の動きが出来なくなった彼女の、もちろん彼女が優れた身体能力でそれらを表現しているのだが、、超自然的な動きが(逆説のようだが)スムーズで素晴らしい。

 

英国のポッシュなホテルにありそうな牧歌的な風景を描いた赤い壁紙(説明にもあるようにインバル自身によるデザインとのこと)が美しく、モランが登場時に着用していたガーリーなワンピースと良くマッチしている。

 

シンプルでありながら美しいセット、印象的な音楽、そして他にはない身体の見せ方、、、そして作品のコンセプトの統一性、総合芸術の極みだと感じた。