先日の失敗を教訓に、今回はポスターを撮影↑

 

昨晩通ったばかりだが、今回はそのお隣の東京芸術劇場シアターウェストでスコットランドの劇作家Douglas Maxwell(ダグラス・マックスウェル)の2000年初演作品「Our Bad Magnet」を観た。

 

これが、先日の「ブレイキング・ザ・コード」同様に素晴らしい戯曲で、英国をはじめ海外の優れた戯曲の世界進出には考えさせられるところが多々ある。(ちなみに今作は世界15カ国以上で上演されているとか)

時間をかけて練り直し、校了、試演を重ねた戯曲は、その後長年に渡ってどこかで上演され続けるという息の長いものになる可能性が大いにあるということ、そしてそれが実現すれば作家の努力も1回限りの上演よりもずっと報われるということを日本の演劇界のビジネスラインにも浸透させてほしいと願っている。

せめて、最初から海外でなくても日本での息の長い上演を実現させてほしい(岩井秀人のハイバイなどはこれをやっている)。

 

**** 演劇サイト より ********

 

物語の舞台は、海添いの小さな町。登場するのはアラン、フレーザー、ポール、ゴードンの4人の同級生たち。かつては人気観光地だったがすっかりすたれてしまったその町に、29歳になった彼らが苦い思い出を抱えながら集まってくる…。物語は彼らの9歳、19歳の場面を行き来しながら、4人のその時々の孤独と真実が描かれていきます。劇中劇を盛り込みながら、現実とファンタジーが交差し人生の真実を浮き彫りにしていく、切なく美しい物語です。

 

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この翻を上演しようと言い出したのは誰なのか?演出の大河内直子?それとも翻訳の広田敦郎???

— 広田の翻訳は日本語にないものは原語のままという彼のスタイルに沿って、会話に重要なスピード感を持って訳されていて、そこが若い男の子たちの機関銃トークにブレーキをかけず、うまく機能していた。

 

また、若い男の子4人のみというイケメンらの少人数キャストという設定も今時の演劇ビジネスにピッタリハマっていて上演にはうってつけだと思った。

 

Ian Curtis (Joy Division)、The Cure、The Smith (Morrissey)などの若者に人気のバンド名、そしてサッカー選手の名前などがそこここに盛り込まれているのだが、これらも登場人物のキャラクター、バックグラウンドを知るにはとても重要で、おそらく本国で上演された際にはそれらの名前を聞くだけで一瞬にして彼らそれぞれの人生が目に浮かぶ効果を生んでいたのだろう。

 

9歳の時には同じスクールユニフォームを着て、放課後に無邪気にはしゃぎあっていたメンズたち、、がその後一緒にバンドを組み、徐々に道を分かち合い、、さらにある目的のため久しぶりの再会を果たした29歳の3人(一人は行方知らずになっていて、その件をめぐって3人の中で意見の相違、反目感情が起きていた)はそれぞれに人生の現実に向き合っていて、そこには長きにわたる親友だからこそ言えない、でもどうにもならない秘密も存在していた。

 

===今、ハッと思いついたが、つい先日岩井秀人の「おとこたち」も長年続いたメンズたち4人の人生を描いていたな〜〜、あの作品もえらく切なく、そしてやっぱり”おとこたち”(あくまでも、おんなたちではなく)の人生を通しての友情物語だったな、と。

 

そして、スコットランドと言えば、名作映画「トレイン・スポッティング」。あちらのメンズたちはかなりワルの方へ向かっていってしまったが、こちら舞台の4人はそこまではいかない。

 

 

彼らの20年に及ぶ友情物語という話の流れに加え、その行方不明になった(おそらく亡くなっている)4人目の男、転校生のゴードン(小西成弥)がもしかしたらとてもハッピーとは言えない彼の特殊な家庭環境がもたらしたのかもしれない突出した文才を垣間見せるシーンでは彼が書いたという「空の花園」「悪い磁石」という子供向けの寓話が朗読され、演じられるのだが、その寓話も充実したものになっていて見逃せないシーンとなっている。

 

今回の4人のイケメン役者たち、

これが見事にハマり、素晴らしい舞台に仕上がっていた。(奥田一平、松島庄汰、木戸邑弥、小西成弥)。

 

ストーリーの謎解きから、キャラクターの関係性、埋め込まれた寓話、彼らの成長過程のエピソード、、そして何と言ってもそれを演じている4人の役者が良い。

 

何を観ようかと迷っている人には池袋でのこの舞台、オススメします。