駒場アゴラ劇場で青森を拠点に活動する渡辺源四郎商店の新作「Auld Lang Syne」を観た。

 

「Auld Lang Syne」は日本で蛍の光として知られるスコットランド民謡で、これが別れ、もしくは旅立ちの歌として歌われる楽曲で、船の出航時にも使われることから、この青函連絡船の歴史を辿る劇(青函連絡船シリーズの4作目)のタイトルとなっている。

 

1908年にスコットランドの造船所からやってきた比羅夫丸が青森と函館を結ぶ連絡船の第一号から始まり、その後便数、つまり船の数も増え、乗客も増えていったのだが、世界大戦による船舶不足などの影響で貨物輸送の目的で使われることが多くなり、それぞれの船の用途も分かれてきて、一緒に青森近海で働いていた船たちも蛍の光をバックに別れていくことに。そしていよいよ青函トンネルの開通となり、解体される日がやってくる。。。

 

と、これらの連絡船たちの歴史を語るのがその船になりきった!?、劇団の女優たち。ー多くが渡辺源四郎商店の店主(座長)である畑澤聖悟が教鞭をとる青森中央高校の演劇部のOGたちだ。

 

彼女たちは紙で作った船のかぶりものを頭につけ、感情豊かに!!船を演じていく。船の型式、古さ、役割などにあわせ、キャラクター分けをして船の一生を演じていくのだ。そして時に、このチラシにあるように海の女神様が現れて彼女たちを導いていく。。という想像力に溢れた(想像力を持ち込まなければ成り立たない)設定、構造になっているのだが、観ていくうちに不思議とそのなんとも奇天烈な設定がおかしいとは思わなくなってきて、こちら側も船の気持ちに感情移入していくようになるのだから、不思議だ。

 

人々を集め、これまでに起こったこととか観客に考えてほしいこと、を役者たちが演技を通じて伝えていく、、、演劇ってそんなことのためにあったんだよな、と再確認させられた、そんな素敵な舞台だった。