連日の東京芸術劇場通い、この日は神里雄大/岡崎藝術座の新作「イミグレ怪談」をシアターイーストで観劇。

 

イミグレとはイミグラント=移民のことで、作者は今作を「出稼ぎ幽霊の話」と称している(当日パンフより)。

 

***** 演劇サイト より*******

幽霊が移民する!? 見えない隣人と旅する、神里流ホラーコメディへの挑戦。
那覇文化芸術劇場なはーとの共同製作による新作公演!

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見えない隣人──幽霊や妖怪は日常に潜んでいる。わたしたちの隣人と言ってもいい。
存在するかしないか、そんな議論は不要だ。見える人にしか見えない存在。見たくない人は見えない、とも言い換えることができる。ちなみにわたしは見たことはないが見たい。見えないものがいたっていい。
そういう「見えない隣人」が、もしも国や地域を飛び越えたらどうなるだろう? と考えたのが今作の構想のきっかけだ。

戦争や地震などのあとには幽霊の目撃談が増えるらしい。
死者を思うことが、幽霊の誕生につながる。だとすれば、その存在はわたしたちの生活にとってなくてはならないもののようである。
なお、イミグレは英語で移民を意味するイミグレーションから採っているが、出入国管理のことでもある。見えないのは隣人なのか、あるいはその存在を受け入れたくない側の人間か。
時が経ち、幽霊の誕生理由が忘れ去られてしまったころ、幽霊は出自不明の妖怪になるんじゃないか、そんなことも考えている。

神里雄大
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同じ週の始まりに観たのが安部公房の幽霊話「幽霊はここにいる」、で戦争でいなくなってしまった人が見えてしまう=心に居残っている、という話だった。

今回の神里の幽霊話はそれから半世紀、グローバルな世界になった、ネットの普及で世界の距離は狭まったと言われるが、移民として住む国の移動を余儀なくされた人々の歴史、彼らが開拓しようと汗水流して努力してきたその賜物は現在に活かされているのか、なき者として見過ごされたままグローバルが進んでいるのでは?そんななき者=見えないもの、つまり現代の幽霊に思いを馳せる3者の幽霊(タイ、ボリビア、沖縄)によるオムニバス劇となっている。

 

ペルー生まれの作者だからこそ書ける、日本の内だけの視線に留まらない大きな世界視野を持った傑作戯曲。

 

現代の日本が抱える若者たちの日常の機微を綴った芝居も良いが、このような新しい視点を持ち込んだオリジナリティ溢れる戯曲は本当に貴重、でもって彼流のシニカルなコメディも、そこにセンスが光る。

 

4人のキャスト(1人はビデオ出演)がバラバラでありながら、全体としてのバランスが良く、特に俳優として参加している劇作家・演出家の松井周の自然すぎる演技は必見。(そこに大村わたるのカリカチュアな演技が加わることで絶妙な掛け合いとなる)

 

早い時期での再演が望まれる。