北千住の小劇場、北千住BUoYで円盤に乗る派の「MORAL」を観た。

 

この劇場へ行くには北千住の繁華街を抜けて行くのだが、年末の週末とあり小さな飲み屋が両側に並ぶ通りは7時前から(上演開始時間が7時)大いに賑わっていた。なので、行かれる方はその誘惑にのらないように!

 

故如月小春が残した戯曲「MORAL」(1984~86年にかけて如月の劇団NOISEで連続して公演されたその数回のテキストを完成版として再構成したもの)をカゲヤマ気象台が演出、一般公募で選んだ若い俳優たちが演じた舞台を観た。

 

如月小春の社会的で前衛的なテキストも素晴らしいが、それを今日の役者の肉体を使って見事に舞台にのせた演出も見事な作品だった。

 

******円盤に乗る派について******

 

円盤に乗る派は複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所を作るプロジェクトとして、2018年にスタートしました。軸になるのはカゲヤマ気象台による上演作品ですが、様々なプログラムや冊子の発行、シンポジウムなどを並行して行います。
ここで試みられるのは匿名/顕名が平等になる場所です。誰でも発信が可能であり、大きな民衆の声が響き渡る世界の中で、小さな声が守られる場所はとても貴重です。さまざまな声が飛び交ううるさい場所を逃れて、そこであればしっかりものを見、考え、落ち着くことのできるという場所を確保します。それは演劇にまつわるあらゆる要素を、生活とダイレクトに接続するということでもあります。このプロジェクトを通じて、種々の、色んな意味で「実際に活用できる」アイディアを提唱します。ここを訪れた観客たちが各々の生活の中で、それらを実践し、少しでもより生きやすくなることができればと思います。

 

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(今作上演にあたりカゲヤマ気象台がHPに寄せているメッセージから抜粋)

 

『MORAL』という作品からは、「消費社会」や「都市」といったテーマを読み取ることができます。事実、如月小春自身もこの作品を通じて「消費社会の身体」を追求したと語っています。ここで言われる「都市」や「消費社会の身体」という概念は、21世紀における現在においても未だ重要なトピックと言えます。スマートフォンの普及によってインターネットがあらゆる場所に偏在する、グローバル化以後の世界において、「都市」的なものはフラットに世界全体を覆いつつ、我々の身体の中にも染み付いています。

 

「都市」に、「消費社会」の中に生きながら、同時に複雑さや矛盾も抱えた「個」でもある身体を暴き立てるためのきっかけとして、『MORAL』という戯曲の言葉たちは作用します。豊饒なイメージも深い人物造形もなく、単純なセンテンスで綴られた『MORAL』の言葉は、今の時代を生きる出演者たち、または上演の場に立ち会う観客のみなさんの身体に、どのように響くでしょうか。

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公募で集まった俳優たちと2ヶ月におよぶ稽古から(上記のフラットな創作環境)立ち上がったという舞台は、一見無表情ともとれる俳優たちの、ある種自由を奪われ拘束された演技で淡々と進んでいく。

彼らが過ごす日常の中でのひとコマひとコマが、社会に対するシニカルな視線を含んだ如月の言葉と相まって、何気ないシチュエーションの中に張り詰めた緊張の糸を張り巡らせる。

 

演劇の中心に反骨と発言の自由があった時代のテキストを今の若者たちが刷新して観客に提示してくれた舞台。