紀伊国屋ホールでパルコ・プロデュースの「ホームレッスン」を観た。

 

****あらすじ 演劇サイト より *******

中学で現代国語を教える伊藤大夢(田中俊介)は三上花蓮(武田玲奈)と結婚。三上家でともに暮らし始める。いわゆる「出来ちゃった結婚」だった。
そしてこの三上家の日常の中には、当たり前のように奇妙な100の家訓が存在していた。
花蓮の母親・奈津子(宮地雅子)は、まだ慣れない大夢に家族が家族でいるために家訓が必要なのだと語り、頑なに家訓を守らせようとする。父親である三上歳三(堀部圭亮)も家訓を守っているが、どうも奈津子に引っ張られているようだ。
自分は施設で育ったから、「社会適合のプロ」なのだと自負する大夢は、懸命に奈津子についていく。今まで世の中に合わせることで社会を生き抜いてきた大夢は、初めて出会った価値観(家訓)も受け入れて、家族になっていこうとしている。だが大夢が家訓になじんできたある日、家訓を破って懲罰のために部屋に閉じ込められている花蓮の弟・朔太郎(堀 夏喜)を発見する。部屋から出てきても家訓に従わない朔太郎が現れたことで、三上家のバランスはひずみ始め、関係が変化していき、三上家の秘密が浮きぼりとなっていく…。

 

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脚本の谷碧仁さんは2013年から活動している「劇団時間制作」の主宰者で作・演出を担当。近年は俳優として数々の映画にも出演している。ちなみに演出は「劇団温泉ドラゴン」のシライケイタが担当している。

 

ある事件をきっかけに精神を病み、それにより家族に100個の家訓を強要する母親奈津子(宮地雅子)。そこに婿としてやってきた大夢(田中俊介)はすっかり三上家のその独特なルールに馴染み、、それどころか率先してそのルールを厳守していくことに没頭していく。その様は異常とも言える様相をおびてきて、家族に亀裂が入り始める。

 

筆者は彼(谷さん)の作品は初めて観たのだが、今作に関しては全く受け入れられなかった。

 

パンフレットに作者が「家族がどのような過程で形成されていくのか。そんな軌跡を楽しむ物語となっております。」と書いているのだが、「軌跡を楽しむ」、、どころか、早い段階で他者、もしくは警察なりが介入してもおかしくない、むしろそうならなければいけないようなとてつもなく極端な家族なのだ。これをシュールな設定と片づけてしまうのはいかがなものか?

 

昨今のカルト宗教がらみの家庭崩壊に近い状態で、いくら家族(その中心である母親)を思いやっての奇異な行動だとしても、ここまでいくのは信じ難いし、おかしい。

変な家族(もちろんそれぞれの家族が多少の生活習慣の違い、家族間の決まりごとの違いなどがあるのは普通なこと)ぐらいのレベルでおさまっていれば、そこに笑いもうまれようと言うものだが、ちょっとこの人たちに関しては気持ちが悪くて笑えない。

 

さらに、施設で育った主人公の性格をそれを理由として特別視するような視線も、とても気持ちが悪くて受け入れられない。

 

、、、と、とても席に居つづけられないほどに嫌な思いだけが残った劇だった。