マチネとソワレの間が少し時間が空いていたので、文化村ル・シネマでこの「さよならベルリン またはファビアンの選択について」を観た。

 

 

 

 

当初はパルコ劇場の隣の映画館でカンヌで賞を受賞した「ベイビーブローカー」を観ようかなと思っていたのだが、上演時間がソワレに間に合うかどうか微妙だったので、急遽こちらに変更。。これが大当たり!の素晴らしい映画だった。

 

第一次世界大戦の敗戦後、インフレと大恐慌から経済的な大混乱にみまわれたドイツのベルリンで暮らすファビアン。不安的な時代の波の中で生きる彼の身に起こる不条理な出来事、現実の厳しさからの不幸な出来事をナチス台頭が間近に迫るベルリンの社会背景を背景に見事に描いている。

 

児童文学で有名なエーリヒ・ケストナーの唯一の大人向け小説「ファビアン あるモラリストの物語」をベースに作られた本作、2021年のドイツの映画賞で3部門を受賞している。

 

毎晩キャバレーで飲み歩き退廃的な生活を続けるファビアン。下宿先の隣人、女優志願のコルネリアと恋に落ち、同棲を始める件などはミュージカルの金字塔「キャバレー」を彷彿とさせるところも。

個人の自由な恋愛、思想などが黒い大きな力(ナチス)に覆われていく様が直接的な事件ではなく、細かな日常の描写の中ではっきりと描かれているところが、さらにその恐ろしさを増幅させている。

 

主人公のファビアンを演じたトム・シリングと彼のミューズ、女優志願のコルネリアを演じたザスキア・ローゼンタールが非常に魅力的。

 

また、出演俳優たちのリアルな演技は必見。