楢原拓が「ふざけた社会派」のキャッチフレーズのもとで作・演出を行い、その時々の時事ネタをいち早く取り入れ、それを肩肘は絶対張らないようユーモアを交え、心に余裕を持ちながら今の私たちが暮らす世の中について真剣に考える機会を与えてくれる劇団チャリT企画の新作「絶対に怒ってはいけない!?」を下北沢の駅前劇場で観た。

 

”ふざけた”とソフトにうたってはいるものの、言うべき→問いかけるべきところははっきりと言及し、それでもってダブルミーニングのタイトルと言い、劇としての構成と見事なオチと言い、謎が謎を追いかける展開と言い。。。つくづく上手い!のである。

 

今回のお題は、セクハラ、パワハラ、、XXハラ、、とハラスメントの構造とその解決方法の矛盾と難しさ、、そこに今他国(自国も??!)で起きている独裁者たちによる諍い、暴挙のカラクリをトッピングし、私たちの社会に蔓延る人と人の間で起こる摩擦について、その結果の悲しい結末も見せながら、「明日は我が身」の事件として描いている。

 

具体的にはある小規模の劇団で起きたパワハラをめぐってのドタバタ劇、と言うことになるのだが、まさに今、巷(演劇界界隈)で大いにスキャンダルとして問題となっているかなり悪質なセクハラ&パワハラ疑惑について前日の夜に色々と聞いただけに(それも1箇所だけでなく、何箇所かで似たような問題が発覚し始めて(!これからもっと?)いるらしい)、そのタイムリーさに開幕直後から度肝をぬかれた。

 

その演劇界で告発され始めたセクハラ&パワハラ問題に関してなのだが—映画界でも次々と出てきているようだが— そんなことが行われていることが信じ難いし、さらに多くのケースが見過ごされてきたと言う事実に本当に驚かされる。

そんなことやっているから、いつまでもマイナーな一部の人だけの「演劇界」から抜け出せないのだと思う。

グループの中で中心的な存在、もしくは作り手の役割を担っているリーダーによるそのような暴挙、彼(彼女)らは本当に自分がいなければ。。。もしくは自分の存在だけがグループを成り立たせている、とでも勘違いしているのだろうか?

芝居は集団創作で、一人では何も作り出せない。それをわかっていれば、他の人へのリスペクトも生まれると思うのだが。

 

で、今回の舞台の話に戻るが、上手い!と思わせた1番のキーポイントが、舞台サイドから答えを提出するのではなく、あくまでも観客に考えさせる芝居を提供しているという点。

 

パワハラもセクハラも、基本的にいけないことだと言うのは一目瞭然の答えであるのだが、では何がそのパワハラ、セクハラ、、に該当するのか、良かれと思ってやったことでもその対象になってしまうこともあるのだと言うこと、逆にパワハラ、セクハラを利用することを(初めは意識的にではないとしても)考える人たちもいることが現実だと言うこと、、、そして、戦争に関しても様々な捉え方があり、またそれ以前に戦争を意識しない若者たちもいると言うこと、、、などなど、そしてなどなどが2時間弱の推理仕立てドラマの中で本当に多くの、そして様々な視点から提案された問いかけ(世代間ギャップ、リーダーの在り方など)が観客一人一人に投げかけられている。

 

演劇サイトの感想でも、初めから最後まで引き込まれた、、との感想が多く載っていたが、そうさせる細かいネタ、仕掛けがあり、やはり「あっぱれ」と唸りたくなる舞台だった。