下北沢スズナリ劇場で流山児事務所の新作公演、今回が流山児事務所と初タッグを組んだ、関西を拠点とするリリパットアーミーの二代目座長(初代は故中島らも)わかぎゑふ作・演出の「黒塚〜一ツ家の闇」を観た。

 

***演劇サイトより***

 

『拾遺和歌集』で詠われ、民間伝承として語り継がれてきた鬼婆伝説、能では『黒塚』、歌舞伎・浄瑠璃では『奥州安達原』として有名な母子の因縁物をベースにした戦国時代劇。

新庄という在所に「笛吹峠」と呼ばれている場所があった。そこを超えると京の都への近道のため、長い間土地をめぐる争いごとが絶えない。しかし20年前に起きた事件をきっかけに峠は封印。みすぼらしい一ツ家があるばかりなのだが、そこに近づいた者は誰一人帰らず、いつしか「鬼が住む」と怖がられている有様である。

見かねた領主、堀兵右衛門は、嫡男月之介に鬼退治を命じる。意気揚々と笛吹峠の一ツ家に住む「鬼」と対面するのだが、そこに待っていたのは過去の大きな因縁だった。

 

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能(「黒塚」)や歌舞伎、浄瑠璃の演目(「奥州安達原」)として有名な「黒塚」をベースに、今日、世界各地で起きている多くの諍いの原因となっている土地をめぐり対立する立場の報復合戦、憎しみの連鎖といった問題を盛り込み、その不毛な殺し合いの愚かさを訴えている。

 

そのような血生臭い殺し合い、そして脈々と続く憎しみ合いの歴史に関して明かされるのは舞台後半。前半、特に登場する人物たちの人間関係や土地に残る鬼婆伝説について説明するはじまり部分はリリパットアーミーの劇団名についていた"笑殺軍団”というカテゴリー通り、笑わせる小ネタ —部下が身分の高い身分の領主(上田和弘)の嫡男(里美和彦)にゴルフやテニスをする場で大袈裟にゴマをすったり、その息子の愛人(伊藤弘子)と家来の嫁で世話係(平野直美)がコミカルなやりとりを展開したり— がふんだんに盛り込まれていた。

 

そんな幕開けのっけから観客の視線を釘付けにし、笑いを誘う流れが出来上がるのはやはり百戦錬磨の流山児事務所所属の劇団員役者たちの「上手さ」と言うほかない。

 

まさに、劇団という集団の中で培ってきた、やりとりのあうんの呼吸、絶妙なアンサンブルが成せる技。歌っても、踊っても殺陣を展開しても、しっかりと噛み合った集団というものの強さが今回もいつものように、ヴィヴィッドなライブ舞台を作り上げていた。

 

所属する劇団員で上演を続ける「劇団」という演劇創作が主流だった80年代〜の小劇場ブームではそれぞれの役者が毎回決まったタイプのキャラクターを受け持つということが多く、そこに安定感をみたものだが、久しぶりにそんな劇団の一つの長所を感じた舞台だった。その安定感を信頼して、この劇団を見続けている観客も多くいるのだと思う。

 

— 様々な劇団、アーティストとのコラボを展開している流山児事務所では外部の役者とのコラボ舞台も多くあるのだが。