夜は静岡市内の駿府城公園での野外劇、SPAC芸術監督、宮城總台本・演出の「ギルガメッシュ叙事詩」を観た。

 

今作はパリのケ・ブランリー美術館からの委嘱を受けて製作された作品で(ちなみにSPAC・宮城は2016年に同美術館からの委嘱を受けて「イナバとナバホの白兎」を製作している)、今年の3月にパリで世界初演を果たしている。

 

 

ちなみにフレンチの広告イメージはこんな感じ。

 

世界最古の現存する文学「ギルガメッシュ叙事詩」では絶対的な存在であった古代メソポタミアの王ギルガメッシュ(ク・ナウカからの黄金コンビ、大高浩一(ムーバー)・阿部一徳(スピーカー)で演じられる)は神が使した自然の化身エンキドゥ(大道無門優也(ムーバー)・吉植荘一郎(スピーカー))—チラシで緑の木々を纏った方の人—、と戦うことになるが勝負がつかず、二人は親友となる。その後、都市建設のためのレバノン杉を求めて森へと入っていったギルガメッシュとエンキドゥは森の番人フンババ(沢則之創作による巨大な人形(舞台セット)?により表現される)との死闘の末にレバノン杉を手に入れるが、その自然破壊の罪によりエンキドゥが命を落とすことに。大事な友人を失ったギルガメッシュは悲嘆にくれ、また自らにもいつの日か訪れるであろう死を恐れるようになる。

 

スタイルとしてはSPACの野外劇—「マハーバーラタ」「天守物語」など — の流れを踏襲していて、棚川寛子による打楽器音楽が舞台上でライブ演奏される中、ムーバー(無言で演技をする人)とスピーカー(台詞を語る語り手)がエンキドゥやフンババのような想像上の生き物が人間たちと共存するという宗教色の濃い古代メソポタミアの文学を良い意味でわかりやすく、またカラフルな衣装と美術、そして今回は特にそのシンボリックなメイク、そしてライブ音楽により祝祭的舞台にまとめ上げている。

今回はそこに、さらに視覚的な喜びの一つとして前述の沢則之の大小様々、様式も様々な人形たちが登場し、目を楽しませてくれている。

 

世界三代演劇祭の一つアヴィニヨン演劇祭でオープニングを飾った、やはり野外劇の「アンティゴネ」で冒頭に登場した口上役の手法が今作でも使われており、3人の巫女?により、劇の初めに「ギルガメッシュ叙事詩」という日本人にはあまり馴染みのない物語を肩肘はらずに楽しむよう、場を和ませる役目を担っていた。

 

話は、言ってしまえば超シンプル、そしてメッセージもド直球、、、近年声高にさけばれている「自然破壊」への注意喚起だ。

 

自然保護の重要性に反対する者はいないはずなのに、やはり目の前の利潤の前に「不都合な真実」として見て見ぬふり、もしくは後回しにされているこの問題。ある意味では人類を滅ぼすのは「核」の脅威よりも、この「自然破壊」であるという真実を、この古代文学から読み取り、再度肝に銘じることが重要なのでは?と静岡の夜空の下で無防備になった(マジ、寒かった)観客たちに問いかけていた。

 

ク・ナウカ時代からその救心力が衰えることのない大高浩一(美加理も同じ)の存在が大きいことを再確認した舞台でもあった。