座・高円寺で工藤丈輝のソロ舞踏舞台「蹠の剃刀 The Foot on the Edge of the knife」を観た。

 

*****演劇サイトの作品紹介より****

危機を嗤い、みずからの正体を暴くこと

地震、放射能、疫病、疾患、死、……さまざまな障壁をくぐり抜けながらも真新しくライブリーな作品を座・高円寺から発信してきた当企画が、従来の慣習的な手立てのいっさいを捨て去り、識閾下に埋もれた「人間性」の諸相を顕にします。
「蹠の剃刀」とは舞踏の創始者、土方巽が歩行法のイメージとして投げ出した一個ですが、安穏で無菌の生き方が推奨されるこの時代、この言葉の持つ意味は大きい……。

ことし7月、コロナ渦のフランスでルモンド紙に「衝撃的な存在」と評された舞踏家が東京の舞台であらたな波動を世に送ります。
音楽は「アジア・トライ」主宰、各国で幾多の舞台を支えてきた曽我傑、美術に’21年日本アカデミー賞美術部門で優秀賞に輝き、いまや名実ともに乗りにのった黒川通利と、工藤作品には欠かせない人物が集結しました。

 

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二年前、劇場の同シリーズで彼の舞踏「飴玉☆爆弾」を初見し、コロナ禍で客席に空席が目立つ中(今回の公演はそんなことはないが)、油断をしていたらガッツんとやられ、すっかり虜になってしまって以来、チラシを目にするたびに新宿三丁目などに彼のステージを観に出かけている。

 

その新宿の小劇場(雑遊)では、大掛かりなセットはなくミュージシャンとの即興的なコラボを楽しめるのだが、二年に一回の座・高円寺の劇場公演では舞台に大きな世界観を打ち出してくれる。

 

今回は前述の説明にある黒川通利が舞台中央に我々が住むこの惑星を吊るし、その前の高台で工藤が今の時代の人々を表現。

オープニング預言者のごとく、全身、顔までを黒の衣装で覆った工藤が舞台後方から我々観客を値踏みするようにそろりそろりと現れ、舞台へと上がり、その後は曽我傑の12曲のオリジナル音楽にのって見えない糸に操り操られる人々を、古びた日の丸を掲げた人を、また花を頭上に咲かせ嬉しそうな人を。。。表現していく。

後半、「危機を嗤え!」と題されたシーンでは、工藤のユーモアが観客を煙に巻くのでご注意を。

 

舞踏、と言ってもその一言では片付けられない、多様性があることを、また再確認させられた(それは他の舞踏ステージにも言えること)。