三軒茶屋のシアタートラムでケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川たまきのユニット、ケムリ研究室の新作、安部公房の「砂の女」の舞台版を観た。

 

1964年に公開された勅使河原宏監督、岸田今日子と岡田英次主演の映画が有名なこの不条理小説。今回は緒川たまきと仲村トオルがその主人公2人を演じている。

 

ある日昆虫採集に知らない田舎町へ出かけた中学校教師、仁木順平(仲村)は一晩のつもりで泊まった寡婦=砂の女(緒川)が住む砂の穴の底にある家に閉じ込められてしまう。初めは必死に脱出を試みる仁木だったが、家を取り囲む砂の壁が登ろうにも崩れ落ちて登れないように、どうにもその状況から抜け出せない。次第にその砂の女と夫婦のように暮らすようになった仁木。彼を騙し、砂底に幽閉した村の人たちの一方的な要求にも抗う気力をなくしていく。

 

小説の不条理な世界を見事に映像化した映画の不思議さ、集団心理の怖さ、人間の性の根深さ、、はどのような形で舞台に表れるのか。

 

その独自の世界観に定評があり、そこが揺るぎない人気の秘密であるケラ演劇ではあるが、今回の舞台に関しては、原作の世界を観客へ伝えるため、これまでの自分のやり方を思い切りよく投げ捨てて、あくまでも安部公房ワールドを立体化することに専念している。

うす暗い照明の舞台上、ケラ作品の特徴の一つである映像—砂嵐や砂が家を侵食する様子—で砂の女と仁木の出口なしの状況を表現。

今回の新しい試みとしては、状況を俯瞰してみせるため、仁木の人間よりもサイズダウンした人形を使用。

また音楽担当として参加している上野洋子が舞台袖上でライブ演奏している多様な楽器演奏による音楽もそれぞれのシーンに見事にあっていて、舞台の統一感に大きく寄与していた。