5日、月曜日から観劇2本立てを敢行。

昼は新宿、紀伊国屋ホールにて文学座の「初雷」を観劇。

数日前にシアターガイドのウェブページにて、前編集長今井氏が勧めているのを読んで、千秋楽ぎりぎりでチケットを押さえる。
劇場は昼の回ということもあって、中高年の方々が大多数を占める。
舞台にはごくごく一般的な日本家屋一軒家の食堂と居間が丁寧に再現されている。
舞台上ではちょっとばかりタイムスリップしたような、まだ昭和の価値観が染み付いているようなホームドラマが展開されていく。
突然の家族の不幸により、やりたかった事を我慢してきた主人公理子も、年月が経ち家族も自立し、やっと自分の時間を取り戻そうとしていた。旅行会社でのキャリアウーマンの道を諦め、家に入った理子は人生も中盤に差掛かかったこの時に、第二の人生の決断をせまられ、大いに悩む。その背景には中年からのキャリア再開だけではなく、やはり家族のために婚期を逃した女の気持ちも微妙に絡んでくる。

まるで、トレンディードラマ全盛以前のテレビのホームドラマを観ているかのような、ごくごく普通の家庭のあくまで身近な、ありそうなエピソードが詰まった話。
まさに、集まった観客が一番興味を持ちそうな、さらには最後にはほんわかとした温かい気持ちで席を後に出来そうな、、そんなホームドラマであった。
ちょっとご都合主義的な嘘くささがちらほらしていたが、、ま、これもありなのかなという感想。

夜は昼のほんわかホームドラマとは対局にあるような、現代若者の挑発劇、若手一番の注目株、三浦大輔率いるポツドールの「激情」を下北沢で観る。
もちろんのことながら、昼間の観客層とは交わる事無く、10代〜20代の若者が占める観客席。

過激な舞台表現で(前前作では、台詞なしで若者の生活実態をほとんど裸状態の俳優が2時間演じきった)何かとお騒がせな同劇団の2004年初演の今回は再演舞台となる。

近年は都会の若者達の風俗を描いた作品を続けて発表しているが、本作は舞台を行き深い東北の田舎町に設定し、田舎の若者達の閉塞感、狭い社会での人間関係をネガティブな視点から、どろどろとした人間模様を見せつけて行く。
根雪が残る東北の田舎町の風景のようにその泥の混ざった雪の固まりのような嫌悪感が心に残るように仕組まれている。

このどうしようもない、閉塞感は現代の若者に共通する心象なのであろう。「どうして希望が持てようか?」というのが彼らの言い分なのであろう。
そんな中、一組の素朴なカップルが一筋の希望を小さく灯している。

いつもの公演より若干小屋が大きくなった分、役者の台詞が聞きづらくー特に方言部分は客席まで届かずー、一方、劇団のこれからの方向性(マンネリズム)を危惧する感もあるが、、近年んのワンルームマンションプレイばかりでなく、このような広いセットで、ナレーション、ストーリー付きの芝居をこれからも観てみたい。

あっぱれと言いたくなる程のいやらしさ、人の暗部を露呈するこの芝居、現代をある角度から描写したらこのように映し出されるのかもしれない。差別の連鎖も性的暴力も全てが計算し尽くされた、頭の良い、現代若者劇であった。