「濃い霧を消すにはどうするのですか」そんなことを彼女に聞いてみた。

 

彼女とは、霧の彫刻家・中谷芙二子さんである。1970年の大阪万博でペプシ館全体を霧で包んだことは今では伝説となっている。

 

地面の縦横に配置した細い導水管には、小さなノズルがいくつもつけられており、そこから高圧で水を噴射し、あたりに霧を作る。霧は、気温・湿度・風向きによって変幻自在にその姿を変えながら、大気の中に溶け込んでいく。一回性の芸術。

 

 

 

冒頭の問いの答えに驚いた。濃い霧を少し加えればいいのです。すると霧の粒がお互いに凝集し、水滴となってたちまち降下してしまうのだという。

 

強大な力を別の強大な力で追い立てるのでは無く、力の内部にあえて過剰さを導くことによって力が自壊するのを促す。

 

それを聞いてまさに霧が晴れるような心持ちになった。

 

        ー 福岡伸一 / 朝日新聞 2017年12月28日

 

 

 

 

 

1970年の大阪万博に行ったとき、ペプシ館が霧でモワッとしていたのを見た記憶があって。僕が環境問題、生物、大気の散逸構造とかに興味を持ったのが20年ぐらい前ですが、そこで霧の面白さに気がついて、中谷さんの仕事にあらためて興味を持ちました。

 

霧は見えない空気を可視化するということですから、これはアートの本質だと思ったんです。見えないものを可視化する、聞こえない物を可聴化するっていう、美術や音楽の大事な役割だと思います。見ていることを疑ったり、見えないものを見ようとするところが大事だと思っています。中谷さんの影響は大きいですね。素晴らしい環境芸術だと思います。

 

        ー 坂本龍一 / 美術手帖 2017年5月号 インタビュー

 

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