「世子邸下(セジャチョハ)!」
チャン内官が身体を半分に折り曲げて頭を下げた。その挨拶もそこそこに、ヨンはラオンから視線を外さなかった。
「顔色が良くないな。」
ラオンが答える間もなく、チャン内官が素早く答えた。
「風邪を引いたようでございます。」
「体調の悪い奴(ニョソク)が何をしようとこんなとこまで出てきているのだ?薬は飲んだのか?」
無意識のうちに心配している本音が口から出てしまったヨンは、急いで言葉を足した。
「万が一お前の風邪が他の者に移ったらどうするつもりだ?」
両目を輝かせて傾聴していたチャン内官が、心配ないとでもいうように手を振った。
「ご心配なさらないでください。小人(ソイン)誰よりも健康(コンガン)でこれしきの風邪など移ることなどありません。」
「それでも万が一ということもあるゆえ、今日は薬を飲んでよく休むのだ。」
ヨンの言葉にラオンが首を振った。
「いいえ(アニオムニダ)。小人(ソイン)は大丈夫でございます(ケンチャンサオムニダ)。」
「私が大丈夫ではない(ネガ ケンチャンチ アンタ)。」
「はい?」
「宴の開かれている間中、お前を傍に置かねばならぬのに、私はそこにいるチャン内官程は丈夫ではないゆえ。それでお前の風邪が私に移ってはどうするつもりだ?」
「しかしながら(ハオナ)・・・・・。」
今日日課が遅れただけでも他の宦官たちに本当に申し訳ないところだった。それなのに今更ここに来て風邪のために帰るなど、他の宦官たちに見せる顔がないことになる。ラオンが困った顔で目配せをしてみたが、無駄だった。彼女の送った合図を見ても、見て見ぬふりをしたヨンは、チャン内官へと振り返った。
「手先の器用なチャン内官の考えはどうだ?」
「小人(ソイン)の未熟な判断では・・・。」
ヨンの真意を知る由もないチャン内官は、ただ、『手先の器用な』という言葉に舞い上がった表情で言葉を続けた。
「邸下(チョハ)のお考え通り、千回、万回考えても同じように思われます。」
「ほら見よ。ここにいる手先の器用なチャン内官も私と同じ考えだと言っているではないか。たとえ宦官とは言え、自分が使える主人(サンジョン:上典)の身体のように自分の身体の面倒を見るということも分かっていなければならぬ。ゆえにお前はいますぐ帰り、自分の世話をせよ。」
「しかし(ハオナ)小人(ソイン)にはすべきことが沢山あるのです。」
「心配するな(コクチョン マラ)。それごとき、ここにいる手先の器用なチャン内官がうまくやってくれるゆえ。」
ヨンの言葉に、ラオンは呆れた表情になった。
そんな言葉が通用すると思っているのですか?チャン内官様がいくら純朴でも、いくらなんでも・・・・・。
「可否がありましょうか?ホン内官、安心して居所に帰られてちょっとお休みください。後のことは、手先の器用なわたくしめが、全部うまくやっておきますから。」
チャン内官はしまりなく口を開けて笑うと、両手を持ち上げて見せた。王世子(ワンセジャ)の称賛がそれほど嬉しいようだ。
あぁ、そのように純朴すぎる人もいるのね・・・・。
ヨンの称賛の言葉いくつかで舞い上がってしまったチャン内官は、日照りで荒れた東宮殿(トングンジョン)の庭園へと向かった。幼い子供のように、かなり高調した様子で向かうチャン内官の後ろ姿を、ラオンは申し訳なさと戸惑いの混ざった顔で見守った。
「あんまりじゃないですか?」
チャン内官が見えなくなると、ラオンがヨンへと困ったように言った。
「私が何を(ネガ ムォル)?」
「すぎた称賛でチャン内官様に私の仕事まで押し付けてしまわれたじゃないですか?」
「ではその身体で仕事をすると言うのか?」
「私がしなければならない仕事です。私一人体調が良くないからと、ほかの方に迷惑をかけることはできません。」
「宮殿の融通性云々と言っていた奴がこんなことではどうしてそう自分一人行き詰ることを言うのだ?」
「その時は母上(オモニ)と妹(ヌイ)に会わねばならない切迫した事情があったためにあのようにしたのではないですか。」
「母上(オモニ)と妹(ヌイ)を切迫するほど大切にするほど、自分の身体も必死になって大切にせよというのだ。」
「それでもこれはダメだと思います。考えてみてください。私のためにチャン内官様はさらにたくさんの仕事をすることになりました。これから申し訳なくて、チャン内官様にどのようにお会いすることができましょうか?」
意地を張るラオンの眉間に、コンッ、痛くないよう、拳骨を食わせたヨンが言った。
「一つは分かって、二つは分からぬのだな。」
「それはどういうことでしょうか?」
「絶対的な上下関係が存在しているところが、宮殿だ。そして、宮殿の上下関係とは、権力の大きさをも、示しているだろう。今日、チャン内官は、王世子(ワンセジャ)の特別な命(トッピョルハン ミョン)において、庭園を手入れするのだ。特別な命(トッピョルハン ミョン)とは、必ずしも特別な寵愛とも相通じているもので、自然と、チャン内官が受けることのできる権力もまた、それと同じくらい増えたことになる。これでもチャン内官に悪いことだと言うのか?」
「何か・・・・とってつけた香りがいたします。」
ヨンを見つめるラオンの目が細められた。いたずらに遠い空に視線をやるヨンが言った。
「横にはっても漢陽(ハニャン)に行きつけばよいのだと(方法はともかく、目的さえ果たせばよい)、このことでお前も休むことができ、チャン内官もまた、利益を得ることになったのだから、一言でいうならば、一石二鳥(イルソクイチョ)とでも言おうか。ゆえに、これ以上意地を張らずに帰って休め。」
「・・・・・。」
「なぜそのような目で見るのだ?」
「いつも宦官皆に対してこのように接するのでしょうか?」
「そんなわけがあるか(クロル リガ イッケンヌニャ)?」
「では・・・・・・。」
突然、胸が高鳴った。しかし、続いたヨンの返事は、ラオンの心臓に冷や水を浴びせた。
「お前が私の友だからこうするのだ。」
友だと言う言葉は悪くない言葉なのに、なぜだかそのように呼ばれる度に、胸の片隅がちくりと痛んだ。分かりようのない痛みに、ラオンは唇をきゅっと尖らせた。
「これからはこんな風にしないでください。」
「なぜだ(ウェ)?」
「うちのお爺様(ハラボジ)の仰ることには、人にはそれぞれの本分があるのだと。私は宦官です。邸下(チョハ)は邸下(チョハ)の本分に忠実でいらっしゃるように、私もやはり宦官である私の本分に忠実でありたいと思っております。邸下(チョハ)が邸下(チョハ)の権力を利用されて、時に私の本分を疎かにさせるようなことがありましたら・・・・。」
「あったら、どうするのだ(オッチョル ゴシニャ)?」
「私も黙ってはいません(チョド カマンイッチヌンアンコシムニダ)。」
ラオンの言葉に、ヨンは呆れたように、くっと笑ってしまった。それからすぐに、笑いを消すと、ラオンを見下ろした。
「畏れ多くも、お前が私を脅迫しているのか?」
ラオンを見つめたヨンの表情が急変した。ひやりとする冷たい目つきに、ラオンは肝を冷やした。
あぁ・・言い過ぎた?
冷たく変わったヨンの目つきを見ると、できることならば、少し前の言葉を取り消したかった。しかし、努めて心の奥を表さないようにした。その時、ヨンが重く感じる声で言った。
「お前の方こそ、本分を疎かにしてはならぬ。」
「何のことでしょうか?」
「私が命を下せば、お前はその命に従うこと。それがお前の本分だ。」
「・・・・・・。」
「命だ(ミョンイダ)。今すぐ居所へ戻って休め。」
緊張に縮んでいたラオンは、そんな荒唐無稽なヨンに、言葉を失ってしまった。緊張が解けて呆けた表情で立っている彼女に、ヨンが懐から何かを取り出して渡した。
「これは何ですか?」
「開けてみればわかるのではないか?」
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チャ…チャン内官様・・・・
えぇ・・・信じちゃったの・・・??(呆然)
「な?休め。」
「ななな・・・なんてことされるんですかっ!!???
いくらチャン内官様が純朴な方だからって・・・!!」
「何を言っているんだ。チャン内官だって喜んでいるのに。」
「そんなのだめです!私には私の本分があって・・・」
頑固なラオンが愛おしくて、つい、笑っちゃうヨン。
でも。
「お前はただ私の言うことを聞いておけばよいのだ!」
さぁて・・・あの小箱、は、何が入っているんでしょうね??(人´∀`*).。:*+゜゜+*:.。.*:+☆
さて(笑)急に現れたヨン・・・
チャン内官に仕事を押し付けちゃうんでした~~~~~(笑)あはは☆想像以上のことをしてくれますね(笑)さすがヽ(゜▽、゜)ノ
もうね~~~、ほんと、すごいのが、毎回毎回ビョンヨンや、ユンソンがかっこよくて転がりそうなのに~・・・
平気で気持ちを簡単に奪っちゃうヨン(笑)(o_ _)ノ彡☆ポムポム
さて。ここからも、お楽しみに~(*´艸`*)
ドラマと一緒かな?違うかな???