もしや、ウォリを心に抱いているということなのですか?
そのとんでもない誤解に、ラオンが、慌てて首を振った。
「ははっ!そうではありません。」
「若い内官が女官に恋慕することはしばしばあります。なので、そう恥ずかしがらないでください。そんなことでもないと、退屈な宮殿生活をどうやって耐えるのでしょう。」
「絶対に、そのようなことでウォリ医女様を探していたのではありません。」
「では、どうしてですか?」
「聞きたいことがあって探していました。」
「聞きたいこととは?」
「昨晩、資善堂でどうしてあんなにも悲しげに泣いていたのかを聞きたいのです。」
「ウォリが泣いていたのですか?それも、資善堂で?」
「はい。昨日の夜に、資善堂の東の楼閣で泣いていたんです。」
「東の楼閣とは、もしや蓮池の楼閣のことですか?」
「はい。蓮池の楼閣で髪を解いて泣いていました。」
「髪を解いて・・・泣いていたと・・・!」
「どうされましたか?」
「やはりいたのですね。」
「はい?」
「やはり、亡霊がいたのです。ウォリに似た亡霊がいたんですよ。」
「亡霊?」
ふと、脳裏に今までのチャン内官が思い浮かばれた。ラオンが宮殿に入って以降、チャン内官はただの一日も欠かすことなく資善堂を訪れた。しかし、一度も資善堂には入らなかった。ようやくその理由が分かったようだった。
「チャン内官様、では、今まで段々私を避けてきたのは、資善堂に亡霊がいると思っていたからですか?」
「やっぱりいたんですよ。やはり・・・・。」
「チャン内官様。」
「やはり・・・やはり・・いたんですよ。亡霊が・・・いたんですよ。」
「チャン内官様、資善堂には亡霊らしきものはいません!」
「今しがたホン内官がおっしゃっったんじゃないですか?昨夜に医女ウォリに似た亡霊が資善堂楼閣で泣いていたって。」
「違います。チャン内官様。ウォリ医女様に似た亡霊ではなく、ウォリ医女様が泣いていらしたと言ったんですよ。」
ラオンが言ったが無駄だった。もはや、チャン内官は、顔面蒼白になったまま、遠くに逃げてしまった。宮殿の人々の頭の中、特にチャン内官の頭の中では、資善堂に現れた人たちは皆、亡霊だという公式が出来上がっているようだった。
こうやって生きている私さえも、亡霊のように扱うことはないのに。
心の中で短く舌打ちをしたラオンは、医女ウォリへと目を向けた。昨日の夜に泣いていたせいなのか?ウォリの丸い顔は、蒼白で、血の気がなく見えた。同年代よりも小さくて体が弱いためなのか、持っている薬草ざるも全然手におえていないようだった。少し手伝ってあげなければならないのではないか?危なげな姿に、ラオンがウォリに向かって一歩近づいた時だった。
「ここにいたのか。」
巨体な男が、ラオンを追い抜いて内医院へと入った。
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誰なんでしょうね!??
あと一回で、この章は終わります☆楽しめますように♪