七.資善堂の怪人(下・1) | のあのあlife

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『雲が描いた月明かり(구르미 그린 달빛)』に史上最強にどハマリしてしまい♡2017年も自分の勉強兼ねて原作小説を翻訳しつつ、パク・ボゴム君とキム・ユジョンちゃんのボユカップル、密かに熱烈に応援中です~♡(笑)
2021年4月、またこのブログ再開します☆

「その話、本当ですか?本当に見たんですか?」

「私の二つの耳ではっきりと聞きました。確かに見たと言っていました。それだけではありません。それどころか、話まですると言っていました。」

東宮殿(トングンジョン)の重熙堂(ジュンフィダン)の隅、風通しのよい軒の下に、一群の女官と宦官たちが集まっていた。彼らがここで集まることも、今日でもう三日目だった。

三日も欠かさずこのように集まる理由は、捨てられていた建物、資善堂のためだった。幽霊が出るという建物で知られた資善堂に、新しい新人宦官が入って以来、彼らは、ここに集まって、チャン内官が持ってきた話に耳を傾けた。

「ところで、おかしいですね。資善堂で死んだのは宮女たちではなかったですか?なのに、どうしてホン内官は男の幽霊を見たのでしょう?」

「この言い伝えにない人を見たのです。資善堂で死んだのがどうして女官たちだけと言えましょう?私が聞いたところによると、女官と恋に落ちた兵士がその池の水に飛び込んで死んだんだと・・。」

「そんなことがあったのですか?」

「アイグ~・・。恐ろしい。」

「ところで、チャン内官、ホン内官が資善堂に入ってどれくらいになったのか?」

大殿(テジョン)キム内官の問いに、チャン内官はすぐに答えた。

「今日でもう三日目です。」

「三日目と・・。」

少しの間独り言を言ったキム内官が、裾の中で貨幣十両を力強く鳴らした。

「では、私はこれからもう三日、耐えることに賭けよう。」

キム内官の言葉に、横に立っていた宮女ヒャンシムが頭を振った。

「三日もまだ耐えるのですか?幽霊を見たうえ、話まで交わしていて・・。すでに北邙山(プクマンサン:人が死ぬと埋葬される所)に足を踏み入れたという意味じゃないなら何でしょう?私は今日一日粘るということに、この珊瑚のノリゲを賭けます。」

「それでも三日も持ち堪えた大胆な者です。私は五日。」

「私は四日にします。」

ラオンを差し置いて、女官と宦官たちの間で賭け事になった。今まで幽霊の出る資善堂へ入って、二日を超えた人はいなかった。ところが、今回新たに宮殿に入ってきた新入りがもう三日も持ち堪え、好奇心をそそられた人たちがついに賭け事をするまでになったのだ。

「ともかく本当に心配です。」

賭けにかかったお金と装飾品を一ヶ所にとったチャン内官が言葉を続けた。

「ホン内官の様子が普通じゃないのです。さっき、そっと資善堂を覗いてみたら、ぼんやりとした表情で、天井を見上げて独り言を呟いているではないですか。そのうち何か事故でも起こらないかと心配です。」

「中宮殿(チュングンジョン)のハン尚宮(サングン)がおっしゃっていたのですが。物の怪に迷うとそのようになると・・。」

「若い人にそんなことがあるはずが・・。」

「それにしてもどうしてソン内官の恨みを買うことになったのか・・。」

「ッチッチ。」

「ところで、ヒャングミ、あなた、世子邸下(セジャチョハ)の昼事の準備をしなければならない時間じゃない?」

「まぁ。うっかり忘れてたわ。」

話に熱を上げていた女官ヒャングムが、さっさと水刺間(スラカン)へ向かって走り始めた。

「私も淑儀(スクウィ)媽々から言われていた仕事があったんだわ。うっかりしてたわ。」

「私もこれで。」

そんな風にして、宦官や女官たちが消えたその後、重熙堂(ジュンフィダン)の軒の下に黒い影が一つ、姿を現した。女官と宦官の話を全部聞いていたかのように、その距離から資善堂を眺める影の顔には、細い筋のような微笑が浮かんでから、消えた。

 

***

 

「私のことなんですが、内官というものは、お偉い方の隣で守ることだけ知っていました。」

がらんとした部屋に一人で座っていたラオンが、天井を見上げながら話した。

「こんなにも誰もいない建物を守る仕事だとは想像することもできませんでした。」

「・・・・・・。」

「もちろん不満はありません。実は、これまで、私はかなり疲れるように生きてきたんです。物心がついてから、こんなにも楽に休んだことはありませんでした。でも、キム・ヒョン、こんな言葉がありますよね?遊べる人が遊ぶのだ。ハハ、私にぴったりじゃないですか?何かを知ってこそ、遊びが遊ぶことになるんじゃないですか?」

「・・・・・・。」

「ところで、キム・ヒョン、どうして皆私を避けるのか分かりません。さっき少しだけ、資善堂の外に出て、他の殿閣を見て回る途中で、他の宦官たちと会いました。久しぶりに人らしい人に会ったので、あぁ、だからと言って、キム・ヒョンが人らしくない人だとかそういうつもりじゃ決してありません。とにかく、嬉しい気持ちを知らないふりしたんです。なのに、まるで化け物でも見るように私を避けるのは何故でしょう。皆なぜそうなんでしょうか?」

ラオンは大梁の上のビョンヨンに向かって話してはいたものの、これといった返事を期待はしていなかった。彼女がここ、資善堂へと入ってから、ちょうど今日で三日目だった。初日と二日目は、全建物掃除をすることにしたが、一日二日だけで十分だった。なので、三日目になる今朝からは、特にすることがないことを理由に、大梁の上にいるビョンヨンに向かって、独り言に近い愚痴を言っている最中だった。予想通りビョンヨンは、たった一言の返事もしなかった。何、関係なかった。いや、こんな風に近くに誰かがいてくれる事実だけでも慰めになった。

「私が言ったではないですか?キム・ヒョンがいてくださってよかったと。」

石像のように固まっていたビョンヨンの背が、びくっとしたが、下にいるラオンには見えなかった。

「キム・ヒョンがいらっしゃらなかったら、ここでの生活はかなり辛いものだったでしょう。」

本心だった。男と言う事実が、それも、相当格好のいい男というのが気にかかったものの、この寂寞とした場所に彼さえもいなかったら、寂しさに震えあがって、二本の手と二本の足だけ持って逃げだしたかもしれない。確かに、ここから出たとしても、ソン内官が望む、豪華な新参礼はできはしないから、再びどこかへでもやられたかもしれないが。

寂しそうな笑みを浮かべたラオンは急いで楽しい話題に話を替えた。

「うちのタニの話なんですが、とても良くなったでしょうね?」

本来は、こんなにおしゃべりではなかったんだけど。何もすることがないから、おしゃべりになるんだわ。それでも、じっと黙っているよりはいいんだけど・・。

「神醫(神医)がその子を見てくれたのですが、ひょっとすると、布団からさっさと起き上って出ているかもしれないんです。私が宮殿から出るときには、私よりももっと健康かもしれませんよね?」

想像するだけで楽しくなって、沈んでいたラオンの顔が、すぐに明るくなった。

「私の夢なんですが、うちのタニがお嫁に行く時に、普通の両班宅の閨秀に劣らず、綺麗な服に、装身具などを締めてやるんです。眩しいほど綺麗な花の輿にうちのタニを綺麗に乗せて、他の誰もを羨ましがらないくらいにして、嫁にやるつもりです。」

そのためにはこのように捨てられた建物で閉じこもっていてはならないのに。何もすることなく、一日一日を過ごしてはいけないのに。

思いにふけったラオンは、開かれた扉の外へと視線を向けた。空の端が赤い夕陽で染まり始めているのが見えた。することもなく過ごす一日がどうしてこんなにも短いのか、それに・・・。ラオンは恥ずかしげもなく、グゥゥ・・音を鳴らす自分の腹を見下ろした。することもないのにお腹の中では、どうしてきちんと食事の度に、ご飯をちょうだいとねだるのか。ラオンは無意識にその場に立ち上がった。

「どこへ行くんだ?」

大梁の上から、久しぶりにビョンヨンの声が聞こえてきた。とっとと元の通りに座り込んだラオンが、嬉しそうに答えた。

「どんなことでもする必要があるようです。」

「する必要はない。何もするな。」

「キム・ヒョンが持って来てくださるただ飯も、もはや恥知らずのまま食べられません。」

「恥知らずが嫌なら機転を利かせて食べるとか。」

「うちの祖父(ハラボジ)がおっしゃいました・・」

ラオンが癖のように検知を広げて言葉を続けた。

「働かざる者、食うべからず。と。」

「幼い子供にそんな言葉を言うとは。お前の爺さん、かなりケチらしいな。」

「労働の重要性を早くから教えてくださったのです。日中の早期教育だと言えるでしょう?」

話が終わるやいなや、ラオンは部屋を出て行った。しばらくして、彼女は小さな膳を持って、再び部屋に戻った。膳の上には、香ばしい香りが漂う、鶏粥の器などが置かれていた。この三日間、ラオンは、ビョンヨンが何かを食べるところを見たことがなかった。頭を上げると、寝返りをうったビョンヨンが目に入った。

「キム・ヒョン、昨日食べ残した鶏肉でお粥をちょっと作ってみました。」

「お前が食え。」

「私はすぐに食べてしまいました。」

「面倒だ。」

「そんなに食べなくてめまいでも起こしたらどうされるんですか?」

「・・・・・。」

「それで大梁の上から落ちたら死ぬかもしれません。それってどんなにおかしなことですか?そのようなことを、犬死と言います。幽霊も笑う犬死。」

「なんだ、そうやって死にたいもんだな。」

「なぜそんなことをおっしゃるんですか。だからキム・ヒョン、降りてきて少しでも召し上がってください。私がこんな風に自慢話をしないですむように。私が作った鶏粥は、死んだ人でもむくっと起き上ってしまうくらい、美味しいんです。」

ラオンが香ばしく匂いの漂う鶏粥で、誘惑してみたが無駄だった。結局、ラオンは口を尖らせ、膳を片側の方に置いておくしかなかった。

資善堂に再び、静寂が訪れた。部屋の床だけを見つめたラオンが、独り言を呟いた。

「あぁ、遊ぶのは本当に大変だ。掃除でもしようか?」

「するな。」

他の言葉には微動だにしなかったビョンヨンが、その小さな声にはすぐに反応を見せた。建物の掃除をするからと言っては、ラオンが資善堂のあちこちを騒然とさせたことを思い出したためだった。身を震わせているビョンヨンの断固とした拒絶に、ラオンは意気消沈すると、首を垂れた。

その落ち込んだ姿が見ていられなかったビョンヨンが、何でもないように一言言った。

「そこまできまりが悪いと言うなら、雑草でも抜くとか。」

「あ!雑草、雑草ですか?」

ラオンは、雑草の茂った資善堂の外へと目を向けた。

「そうですよね。どうしてあれを抜こうと思いつかなかったのでしょう?キム・ヒョン、ちょっとだけ待っていてくださいね。私がすぐにすっきりと抜いてきます。」

何かすることができたというだけで、ラオンの表情が明るく戻った。ラオンは、明るくなった顔で、さっさと外へと飛び出して行った。しかしそう間もあけず、また中へ戻ると、大梁を見上げた。

「キム・ヒョン。」

「・・・・・。」

「もしかして、鎌、ありますか?」

「・・・・・。」

「では、手鋤など・・?」

「・・・・。」

「ですよね?キム・ヒョンがそんなもの持ってるはずないですよね?」

素手であんなにも多くの雑草を引き抜くのは、さすがに無理があった。

「建物のどこかには使えそうなものがあるかもしれない。探してみなきゃ。」

独り言を呟きながら部屋を出ると、後ろから、ビョンヨンの声が追いかけてきた。

「東の楼閣の近くへは行くな。」

「なぜですか?」

「厄介なものが出る。」

「厄介なものって?」

聞いてみたが、寝返りをうった彼からは、何の返事もなかった。呆然と、大梁を見上げたラオンは、建物の外へと目を向けた。

東の楼閣の乱雑なもの?一体、それって何なの?

 

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乱雑な・・

この意味が、下品な、とかわいせつな、という意味もあるんですが・・・☆まだまだ自然に訳することって難しいです☆また、おかしかったら変更します☆→厄介な、に変えました!

 

妹の名前ですが・・・ダンフィか、ダニか、タニ・・ハングルをどう記載するかで迷っていたんですが、もっとずっと韓国語のお上手なお友達が、呼び方にしているとおっしゃっていたので、こちらもタニ、に変更・・・しようと思ったんですが・・・・ダンフィ、も、文字通りで、気に入ってたんですよね・・確かに文字から読んでもらった時に、タニの方が、自然なのかな~・・とは思うけど・・。

成均館でも、ユンヒが、日本語ではユニ、だから、やっぱりここでも、タニに、変えますね♪