老人と海を観た。『荒野の7人』『大脱走』以前のジョン・スタージェス監督のヘミングウェイ文学映画化作品は、ストレートかつ大胆だ。出演もナレーションもスペンサー・トレイシーただ1人。もちろん漁村の漁師や老人を慕う少年・回想シーンなども出てくるが、基本的にずっと1人芝居だ。肝心な巨大カジキマグロは基本実写映像で、捕獲後は特殊造形になるが、本格ブルーバック合成がほぼ初めての長編カラー作品とは思えない見事なシンクロを見せる(その代わり予算は膨れ上がったらしい)。引きのカットはスタジオ内プールと、役者の顔と空の合成で繋ぎ、最も難しいサメとの格闘は、カジキに喰らいつく水中カットを短く交互に見せることで、観客を納得させる。何よりモリが実際に刺さって、出血して沈んでいくサメは凄い説得力(動物虐待で現在は撮影困難)だ。いつもより遠洋に出てしまった老人は朦朧(もうろう)とした意識のまま、骨になったカジキと寄港する。誰も死なずどんでん返しもないが、それでいて大変面白い。セットを組み、ロケをして、劇伴を合わせ、映画の文法通りに丁寧にカットを繋いでいく。私が知ってる"映画"とはこれの事だ。
第31回アカデミー賞作曲賞
1958年キネマ旬報海外映画第3位
