在りし日のノア。季節巡りめぐって。
・亡き猫の知らざるものに蛍火も
おんくんちの広い窓からは、蛍火、見えるかも知れませんね。
・蛍火の僕を逃れて君へゆく
もうずいぶん、蛍火を見ていません。
君を逃れて、また闇に戻って行った蛍火…。 
きのう、バイパスに乗らず、山道をお悔やみに行く車の中で、従弟が言いました。
この辺、蛍の名所だよね?
確かに!あれから何度、蛍の季節が巡ったのだろうかと。桂信子さんの、艶めかしい「ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜」の一句を想いました。
       ◇
ちなみに、本日の長崎新聞「きょうの一句」は、「人生も恋の蛍も一度きり」(辻本みえ子)です。
作者はあてねよりも、ずっと年長。わかりやすい句ですが、思いの深さを思います。筆者の山田ゆう子さんは、「現世で輝ける朱鷺は短いと、蛍の明滅に感じでいる」と記しています。
・夏帽子氷河颪の風に飛ぶ
・糊きかせ弱気を封ず白絣
こんなつよい句もお持ちの作者です。