2回前ぐらいの記事で私がヤクザ映画をかじり始めた経緯は述べたつもりである。



相変わらず齧っているだけで本格的なマニアというわけではなく、未だにわかのままである。


そんなにわかの私が、今回はクソ生意気にも


「今まで見たヤクザ映画で面白かった台詞」


をいくつか挙げていこうと思う。

ここでいう面白いとはinteresting(興味深い)ではなく、単にfun/funny(おもろい)と言う意味でいくつか選ばせていただいた。

中には「お前は何を言っているんだ」みたいな台詞?も含まれているが、ご容赦されたし。いや、意味不明と言うより、本当に言語として判別不可能なのである。


 前置き:怖い台詞の条件とは?


とその前に、ヤクザ映画における面白い台詞…ではなく「怖い」台詞の条件について考えてみる。ひいてはヤクザ映画に限らずとも良いのだが、私が思う怖い台詞の条件とは「これから何をされるか分からない恐怖」を植え付けるものである。

例えば、「今からちょっと○し合いをしてもらいます」と言われるより、「野球やろっか」の方が何をされるかの検討・予測が付かず、映像であれば次に映るシーンの衝撃性を高める効果に一役買っていると思うわけだ。まぁ上2つに限らずビートたけしの喋り方には謎の怖さがあるのだが

いやもちろん、今から○○して××して☆☆にしてやるからな!!!的な台詞でも十分怖いのだが、視聴者はそれらの台詞によって「あっ、今からこいつ大体こんな目に会うんだ」と予想できてしまうワケである。それに比べて、ヤクザに野球やろうなんて言われたらどうだろうか。いくつデッドボールが飛んでくるかたまったもんじゃないし、そもそもバットに当てるのが野球ボールとは限らないのだ。私なら怖すぎてその場で逃げ出すだろう。そしてアウトレイジビヨンドの石原は何故素直にのこのこ付いて行ったんだろう


ふいに思い付いたのでデタラメ書いたが、それでは気を取り直して私が面白かったと思うヤクザ映画の台詞をいくつか並べてみる。あくまで素人の感想なのであんまりアテにせんよーに。



・「オイ…(気さくな挨拶)」

発言者:木内義政(演:佐藤浩市)

映画:さらば愛しき人よ(1987)


しょっぱなから台詞か怪しい代物だが、佐藤浩市演じる時代錯誤の辻斬りヤクザ・木内の台詞。

仲間にコンビニ店員と客をおちょくらせながら、身を隠している主人公の舎弟に「郷ひろみ主人公はどこに隠れているのか」と聞き取り調査開始。

で、開口一番放ったのがこの「オイ…」である。私はこの映画をYouTubeのおすすめで知ったのだが、改めてHuluでこのシーンを見るとなぜか噴き出してしまったものである。理由は簡単、

余りにも声がカッスカスなのである。最初咳かくしゃみか何かかと思ったわ。YouTubeのコメント欄に「墨が足りなくなってきた筆みたいな声」というものがあったが、なるほど秀逸な例えである。敵のはずなのに「リラックス、リラックス…」とやたら馴れ馴れしい木内の態度もシュールな笑いを誘う。リラックスできるわけないだろ

一般的にはこの後の「チャカとダンビラ…」の部分が有名なようだが、私はその前のこのかすれた掛け声ですでに心を掴まれてしまった。



・「広島仁政会の金庫番じゃあ聞いたけえ、どがあなやり手か思うたら…まさか加古村のフンドシ担ぎとはのう」

発言者:上林成浩(演:鈴木亮平)

映画:虎狼の血 Level2(2021)

近年のヤクザ映画といったらとりあえず皆が名前を挙げそうなシリーズ「虎狼の血 Level2」。本作では、日曜劇場で救命活動をしていたとは思えない鈴木亮平氏の魔物ヤクザ・上林の怪演によってストーリーが成立しているといっても過言ではない。彼が登場して少ししてから「広島で1番のビジネスマンを紹介してやる」という名目で訪問したのが、前作でキャンタマを役所広司に切り裂かれた吉田(演:音尾琢磨)の会社「パールエンタープライズ」であり、そこで上林が口にしたのが上記のセリフである。

 映画を見た方なら分かるかもしれないが、この上林、基本話が通じる人物ではない。気に入らなければ上司や女ですら手にかけるほどの、悪人を超えたシリアルキラーである。そんな上林が話を一蹴するどころか「どがあなやり手か…」と一瞬興味を示していたことに、私は少し驚いた。ビジネスなんて鼻から相手にしないといったにも関わらず、一応上林なりにその存在に気を惹かれていたのである。まあ確かに広島で1番でかい組の金庫番とか聞かされたら、どんなアホでも気になるだろうか。ところが出てきたのは「加古村のフンドシ担ぎ」こと吉田の茂であった。さらに本人も「上林の兄貴が放免になったけぇ、なんぞシノギを恵んでやっちょくれぇ言われて」とやけにノリノリである。この想像と現実とのギャップに、流石の上林も破顔せざるを得なかったわけである。これ以降どんどん暴走していく上林の、貴重な和みシーンである。この後の「吉田、来い!」も好き。吉田も何でこんなやつについていったのか



・「あの野郎何の役にも立ちやしねえ」

発言者:池元(演:國村隼)

作品:アウトレイジ(2010)

前のブログでも書いた、俺が1番好きなアウトレイジキャラ、池元のセリフ。あの野郎とは、兄弟の盃を交わしておいて散々にイジメ抜いた村瀬(演:石橋蓮司)のことである。表向きは「会長に紹介してやるからな」と五分の兄弟っぽく振る舞いつつ、裏ではこの言いようである。スパゲッティも食べれないしほんと石橋蓮司かわいそう。

私がこのセリフが好きな理由として、この前に「おい、村瀬の野郎取っちまえ(○してしまえ)」とたけしに言った際に、たけしが(えぇ…)みたいな半ば諦めの目で目線を池元に移す演習がある。もしくは、(やっぱりな…)という目なのか。ともかく、兄弟という名目で振り回した挙句、面倒になったらポイ捨てする。池元のゲスさがギュギュッと凝縮された、アウトレイジで1番好きなセリフである。

前回の記事はこちら↓
『私の好きな映画ジャンルの話』私はそんなに映画が好きなタイプでは無かったのだが、ここ数年で予算を問わず見始めた映画ジャンルがある。 それがヤクザ映画である。何の縁かある時ふと見た北野武監…リンクameblo.jp



・「取り締られ本部の広谷じゃ…」

発言者:広谷賢次(演:松方弘樹)

作品:県警対組織暴力(1975)

いきなり昭和に飛んだが、そもそも私は昭和のヤクザ映画をこれと「仁義なき戦い」ぐらいしか試聴していないので許されたし。そして仁義なき戦いはおもろいセリフが山のようにあるので、別の機会にまとめようと思う。

このセリフの前には、梅宮辰夫演じるエリート警察・海田の「取り締まり本部の海田という者だが、広谷か?」という質問がある。それに対してこの返しである。いやまあ確かにあんたら取り締られら側やけど。何でそんなに開き直れるんだよ。

捻った言い回しだけならいくらでも考えられそうな中、敢えて?シンプルな返しにしたセンスが逆に面白く感じたわけである。

ほんでまた松方弘樹の、腹の底から響いてくるような深い声。洞窟の中で唸る獣のような、ずーんとしたボイスが、このセリフに様々な意味合いを持たせている。警察なんぞなんぼのもんじゃいという威勢、逆にお前らなんぞ眼中にないぞという余裕、が色々見受けられるわけだ。個人的にこの広谷は、「仁義なき戦い」シリーズにおける松方弘樹氏が演じた3人のキャラの個性が纏まったような人物に思える。坂井の鉄っちゃんのカリスマ、藤田の優しさ、市岡の狂気。いや自分はこのへんのベタな作品しか見ていないので分からんのだが、たぶんそんな感じがする。




・「お前なんかとっくにな、遊牧民なってんだぞ」

発言者:諸星要一(演:綾野剛)

作品:日本で一番悪い奴ら(2016)

ナイスショット。痛そう(小並感)

道警の実際にあった不祥事をテーマにしたとかいう本作。このイマドキ言ったらなんか炎上しそうなセリフは、主人公の不良刑事・諸星が、S(スパイの頭文字の隠語)の1人であるデニス植野ラシードに対して吐いたものである。色々あって上手くいっていたビジネスに破綻の兆しが見え、焦りを見せる諸星。犯罪の片場を担いでいるとはいえ、大人しく言うことを聞いてくれている仲間に対して蹴るわ皿割るわと当たり散らす。んで、ラシードに対して放ったのが上の遊牧民宣言である。

パキスタン人で知り合いがカレー作ってるからって遊牧民はダメだろ。カレーは美味しかったんだし。でも逆に、そう言われて頭の中にラシードが羊飼いやらで生計を立ててるのを容易に想像できてしまうワルイ自分もいる。パキスタンの方々はこれを見て何を思ったのだろうか。ほんますんません。


それにしても、デニスは今まだお笑いをやっているのだろうか。一時期割とテレビで見ていたのだが、ここんとこあまり見る機会がないような。

また出てくる機会があったら漫才でもやってもらいたい。「俺ちょっとな、遊牧民なろ思てんねん」みたいな。




ここらで飽きがきたのでいったんやめとく。てか、広谷のセリフを書いてたのが確か1ヶ月前なので、かれこれ一月もサボってたことになる。早速飽きてるやんって思われそうだが(そんな事思われるほど読んでる人間もいないだろうが)、まあ書きたくなったら加筆するだけなので本来ブログとはこんなもんじゃなかろうかと。


あと、「仁義なき戦い」五部作が入ってないやん!という点についてだが、あのシリーズは少々長すぎる、かつおもろいセリフが山のようにあるので、後日別記事にて纏めようと思う次第である。