昭和の流行歌と言えば演歌を中心とした歌謡曲が中心でしたが、
1950年代から60年代にかけて、演歌でも歌謡曲でもない、チョット洒落た大人心を歌った曲もあったようです。
何となく子供の頃の記憶の片隅に残っています。
先日亡くなられた歌手・旗照夫さんが唄った『あいつ』もその一つです。
当時活躍していた水原弘の歌声です。
どうってことのない歌詞、むしろ身勝手とも思える、特に際立っているとも思えない歌詞ですが、メロディーが当時のしては洒落ています。
このメロディーを作曲したのは、ジャズ奏者・平岡精二。
『つめ』という曲の作曲者でもあります。
美空ひばりが唄うと少し演歌っぽくなりますが、聞いているうちに決して演歌ではなく、
Japanese popular music といいますか Standard pops と言うか Japanese nice oldies とでも言いましょうか。
昭和の女性作家の先陣をきった向田邦子さんは、
歌詞にあるような爪をかむ癖があり、この曲をよく口ずさんでいたということです。
平岡精二さんは、戦後まもない日本にあって、演歌でもなく歌謡曲でもない曲を作る希少な音楽家であったと思います。
その平岡精二さんが作曲をした『あいつ』をヒットさせた旗輝夫さんのご冥福をお祈りします。