酒場のたしなみ

吉行淳之介さんの酒場をテーマとした日記風随想集。
 
酒場と言う言葉も、たしなむという表現も、気が付くと近頃あまり聞かなくなりました。
 
この頃よく見かける酒や居酒屋をテーマにした単なるブログでないところが、吉行さんの吉行さんたるところ。
いや~自らこんなこと書けるわけもなく、面目次第もございません。
 
昭和の酒場をめぐる人間模様・駆け引き、酒にまつわる含蓄・薀蓄が、実体験やユーモアを交えて軽妙洒脱に展開される、正に酒をたしなむ人だから語れる酒場千夜一夜物語。
 
 
肩肘張らず、自慢話にならず、さらりと語りかける文章に、知らず知らず引きこまれて行きます。
 
その中で書かれている話を一つご紹介します。
 
酒場の女性が男性の誘いを断る言葉として、一石二鳥三子供と言うんだそうで、
一石は、実は一赤(いっせき)・女性特有の日なので今晩はお断りします、という意味で、それでも、しつこく誘われたら、二鳥・飼っている小鳥に餌をやらなければならないので今晩は帰ります、と重ねて断るも、それでもまだ引き下がらないようであれば、三子供・実は子供が家で待っているといって諦めてもらうそうで、
 
一石二鳥三子供となるそうです。

今この話をしたら、イロイロと言われそうですが、昭和の時代の吉行さんは、サラリと触れて、ニヤリとさせる、流石です。