それは、正に予想だにせぬ巡り合いでありました。
出張先の打合せも無事終わり、11月の夕暮れ時、陽だまりの暖かさが影を潜め、宵闇の寒さが忍び寄ってくる中、足を早めて駅に向かう、まさにその時、目に入ってきたのは、駅のホームにどっしりと停車中の漆黒の機関車ではありませんか。
暮れゆく空にうっすらと黒煙をたなびかせ暫しの休息といった風情であります。
見れば珍しく周辺に人影もないことから、急いで改札をすませてホームに駆け上がり、絶好のシャッターチャンスをものにすることができました。
JR東日本の D51-498型 であります。
駅のポスターによりますと11月3日にSLみなかみ号の運行が予定されており、その準備もあって上越線渋川駅に停車しているところにたまたま遭遇するという幸運を授かったものと思われます。
北関東・北陸・東北を走行する時の用意でしょうか、雪除けが装備され、またトンネルが多い山間地の走行に配慮したものか、煙突には集煙装置がつけられています。
正面左右に配された除煙版(デフレクター)は、下半分を取り除いた門鉄デフとなっています。
しばらくすると蒸気機関車独特の哀愁ただよう汽笛とともにゆっくりとどっしりと発車して行き、正に、汽車は出て行く煙は残る、といった風景であります。時を遡り川端康成の雪国の頃はこれが日常風景だったのでしょうか。
出張には、こうしたハプニング・偶然があるもので、仕事最優先である中、何かと目が離せません。そうそう、こういう景色の後は日本酒ですな~、帰りの車中では駅前で買い求めたカップ酒・柴崎酒造の船尾瀧でのどを潤した次第です。