ジョン太郎の奇妙な物語 -3ページ目

なんてこった。


セクシーなキャミソール姿の朝青龍を目の前にし、もはや絶望感以外の感情が湧いてくることは一切なかった。


シャワー室へと通される。

いつもはカラスの行水だがこの日ばかりは隅々まで体を洗って少しでも時間を稼ごう。

そんなことを思いながらシャワー室のドアを閉めようとする。


・・・・・?


・・・・・・!!!


まさかのアシスト付きだ。


狭いシャワールームに半ば強引に入ってくる彼女。


シャワーくらい一人で浴びれるよ?俺は。
そんなご丁寧にアシストしてくれなくても大丈夫。


そんな思いとは裏腹に彼女の手は止まらない。
なんの躊躇もなく、息子にダイレクトタッチだ。
荒々しく洗われる息子。
彼女を見下ろす形になるため、このポジションからは顔は見えない。
頭しか見えないのでこの角度を維持すれば、少しぽっちゃりとした女性に見えないこともない。
入店から10分ほど経過したかと思われるが、ホンの一瞬、安堵感が訪れた瞬間だった。


しかし、幸せな時間というものは長続きしないものだ。

僅かに気を抜いた自分にマッサの神はまたしても僕に試練を与えてきた。


嗅覚攻めだ。


石鹸をつけて洗ってるそばから臭う。
確認するまでもなく臭いの素は彼女から発せられている。


もういやだ。


頬をつたっているのは涙じゃない。
シャワーの水がはねただけだ。。
震えているのは悔しいからではない。
お湯がぬるくて寒いだけだ。。


ひとりノリツッコミをしながら気を紛らわすが、仕事熱心な朝青龍はあいも変わらず身体をまさぐり続けている。


そして。

何を思ったか息子が目を覚ましはじめてきたではないか。


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中途半端に身体を流され拭き拭きタイムだ。
右手には流しきれていない石鹸の感触が確かに残っている。

だがそんなことはどうでもよかった。
より正確に言えばそんなことに気は回らなかったと言うべきかもしれない。


いま、僕の身体はバスタオルで拭かれている。


あきらかに誰か僕ではない他の人が使ったであろう使用済みバスタオルで。。


しっとりとしたバスタオルの感触を僕はこの先忘れることはないだろう。


辛かったシャワータイムは終わり、いよいよ部屋へと移動だ。
無論、紙パンツなどあるはずもない。
タオルを一枚無造作に掛けられると、うつ伏せから背術開始だ。


ゴングは鳴らされた。

その日は朝からだるく、疲れがたまっていた。


仕事の合間に小一時間ほどの空きができた僕は体の疲れを癒そうと御徒町に立ち寄りエステに向かうことにした。

まじめなマッサージ店にしようか迷ったが、疲れている時ほど人肌が恋しくなるのは僕だけだろうか。

迷ったあげく、肌のぬくもりを求めオイルマッサージ店に決めた。


普段はあまり来ない街だけどどことなく怪しげな雰囲気がなんとも心地よい。

事前予約の時間通りに駅へと降り立つ。丁寧な電話応対でお店まで案内される。
やや古めのマンションの一室のようでエレベーターで上まで上がった。
さて、今日はどんな娘が相手だろう?
HPを見る限りでは20歳から23歳くらいの若くてカワイらしいが在籍しているようで自然と胸が高まる。


「ピンポーン」


「ガチャッ」


「?」


どうやら部屋番号を間違えたらしい。

表札を見上げる。


ん?


部屋番号は確かに合っている。


・・・・・。


どうやら間違えてはいなかった。
HPに載っていない女の子がいても何ら不思議はない。
そんなこと、この業界では極当たり前のことである。

彼女は悪くない。
悪いのは勝手にかわいい娘しかいないと思い込んでいた僕だ。


ドアの向こうにはうっすらと髭を生やした朝青龍が立っていた。



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不敵な笑みを浮かべる朝青龍。

キャミソールを身にまとっているが両胸の間隔が不自然なほどに開いている。


そうだ!
電話がかかってきたふりをして逃げよう!
とっさに閃くとカバンの中に手を入れ必死に携帯を探す。


しかし、、、。

ない・・・!
どこだ・・・?

焦りが焦りを呼ぶ。


そうこうしているうちに彼女は僕の手を取り部屋の中へと招き入れたのだった。

上手を取られた僕は横綱に、半ば強引に押し切られた。


僕は負けたのだ。


部屋は2LDKだろうか。
韓国系のお店のようだ。
奥から韓流ドラマと思われるテレビの音が漏れている。
この時点で既に僕は大きな思い違いをしているのだが、そんなことに気付けるほど心に余裕はなかった。

「この人はママさんで、実際に施術をする人は別にいるはず。いくらなんでもHPと違いすぎる。そうに違いない!」
半ば願望とも言える心の叫びを繰り返していたのだから。


奥のソファに通されるとメニュー表を見せられる。
とにかく一番短いコースにしよう。
メニュー表を確認すると一番短いコースは60分のようだ。
本音を言えば30分でもよかったのだが仕方がない。
コースを聞かれ、2秒で60分と答える僕。

すると、朝青龍は二択問題を僕に投げかけてきた。

「普通の60分とスペシャルの60分があるけど、どちらにする?」

普通の60分は8000円、スペシャルは1万円。その差2000円。

もはや内容に興味はなく、早くこの部屋を脱出することしか頭になかった僕は頭がパニックになっていたのだろうか、スペシャルを選択していた。
マッサージ店での経験豊富な僕は無意識のうちにスペシャルを選択していたのだ。


前金を手渡すとお茶もなくすぐに部屋へと通される。
せめてお茶が出てくれば10分くらい稼げたかもしれないのに、だ。


部屋にはマットとPCが1台。

ゆっくりゆっくりと服を脱ぎ準備が整うと、僕は最後の希望を胸に秘め

「準備できましたー」

と、声をかけた。

そう、さっきのはママさんで別の若い子が担当してくれるのだと自分に言い聞かせながら。


「ガチャッ。」


ドアが開く。


「こちらへどうぞ。」


準備万端の朝青龍が僕を風呂場へと案内してくれたのである。