「折衝力」が試される
みなさん、こんにちは。
「サービス規定に定められているので...」
「原価が〇〇円分高騰しましたので...」
「法律が改正になった関係で...」
もし、こういった一言だけで、
すべてのお客様が
納得していただけるとしたら
こんなにありがたい事はありません。
こういった働きかけに
賛同をいただけるお客様が
多数を占める一方で、
“何でいままでのままではダメなの?”
“おたくの方で何とかできるでしょ?”
という異論の声にも、
私たちは真摯に
向き合っていかなければなりません。
今も昔も、
「会計事務所は、営業行為が苦手」と、
よくお聞きすることがありますが、
仮に、売上に直結する
営業行為自体はノータッチで
やってこれた職員の方でも、
お客様との業務上における
諸々の調整についても、
すべて所長先生や上長に丸投げ
というわけにはいきません。
そこで試されるのが『折衝力』。
事務所側・お客様側双方が納得するために、
折り合いをつける、妥協点を見出すスキルです。
この力は、
どんなに業務処理速度が早い人でも、
税務会計の知識に長けている人でも、
お客様お一人お一人と
直接話す、聞く、理解する、理解してもらうという
経験の積み重ね無しに
磨いていくことはできません。
恥ずかしながら、
私もその一人だったのですが、
その初期段階として
気を付けなければならないことは、
「相手を説得できる」
「相手を論破できる」
とこちら側の都合だけで、
相手を何とかできるとの勘違いです。
“私は全てを知っている人”
“相手は何も知らない人”
という思い込みが、
そうさせてしまうのかもしれません。
真逆の場合もあります。
声の大きい社長から、
無茶な要件を突きつけられるケースを、
誰しも一度や二度ぐらいは
経験されているのではないでしょうか。
それを事務所として
そのまま飲むことはできないと、
頭では分かってはいても、
「ことを荒立てないために...」
「これくらいなら、
引き受けても問題ないだろう...」
と、安易に引き受けてしまい、
結果として身動きが取れなくなるのです。
一方的に伝えるだけの仕事、
一方的に引き受けるだけの仕事。
どちらも外注やAIに
とって代わられる分野の典型とも言えます。
反対に、
両サイドの事情を考慮し、
最適解を生み出せるよう折衝することこそ、
「人間しかできない仕事」と
呼べるのではないでしょうか。
今後、会計事務所において、
10年、20年と食べていける人材には、
そのようなスキルが
求められているのではないかと私は思います。
業務上で必要な知識をつけるのは当たり前。
それらを用いて、
いかにお客様にご納得いただき、
次のステージへと導けるかが重要なのです。
私は、お客様先の現状を
変えなければならない
少々不穏な空気が流れる場面において
担当者の方が冷静に対応されている場面に
同席させていただき、
□ベテラン⇔若手
□男性⇔女性
□幹部職員⇔一般職員
□正社員⇔パート社員
こういった立場の違いに全く関係なく、
「お客様への折衝力が素晴らし過ぎる!」と、
感動した経験が何度となくあります。
お客様との信頼関係が、
しっかりと築けていることが
前提にはなるのかもしれませんが、
やはり、その方ならではの人間力が、
十二分に発揮されてこその折衝力だと
私は思うのです。
これから、インボイスや電帳法など、
法律改正や業務のデジタル化をはじめとした、
変化への対応を私たちだけでなく、
お客様にも乗り越えていただくシーンが
次々とやってくることになります。
前例主義がいよいよ
通用しなくなってきつつある今、
採用や社員教育の際、
「営業力」という狭い分野ではなく
「折衝力」を意識した基準を
設けるべきではないでしょうか。