人の心は
魚のようにいつも濡れていて
すくうのがむずかしいもの
石田衣良
なのになぜ
時々
無性にすくいたくなってしまうのだろう
そういうときふと
お祭りの金魚すくいを
思い出してしまう
金魚すくい
小さいころから
上手じゃなかった
夢中ですくおうとして
紙の網が破れていても
気づかないまますくおうとしてた
すくおうとしてたのは
救おうとしてたのかもしれない
なぜなら
金魚屋さんが
とても怖そうなお兄さんに見えたから
「金魚さん、私の家に一緒に帰ろう
」
」って
「私の家のほうが
このお兄さんといるより安全だよ
」
」って
少女のぴこは
無意識に
そんなこと感じてたような気がする
白地に金魚柄の浴衣と
赤い帯と赤い下駄の
夏の夜・・・
冬が近いというのに
なぜ
そんなシーン思いだすんだろ
今でも
誰かの気になる心に気づいてしまうと
なんだか
金魚すくいの時の心境になってしまう
何もしてあげられないかもしれないし
何もしないで
そっとしてあげるほうがいいかもしれないのに
気になって
つい
いつまでも立ちどまってしまう・・
いつまでも立ちどまってしまう・・