父の通院に付き添いました。
珍しい難病に罹ってしまった、私の父。
病院で検査を受け、結果を待つ間、父の
気に入りの公園で、お弁当を食べました。
花は山桜に変わり、新緑が眩しい晴天の昼。
検査結果が出る頃、診察を受けるため
父を車に乗せて、病院に向かいました。
幼稚園の側を通った時、ママに手を引かれ
元気に歩いている女の子がいました。
ふっと、父が幼かった私を撮ってくれた、
その写真の顔に、その子が似ている気がして
「あの子、子供の頃の私に似てない?」
と父に声を掛けました。
父は「そうかな?」と笑った後、車外を見て
その女の子の姿を、目で追っていました。
私は、父の目を見て、ハッとしました。
その目が、余りに優しげだったから。
わが親ながら "ああ、美しいものを見た" と
心が洗われる心地がしました。
私の家は、母親不在の欠損家庭でした。
でも私は、何だカンだ言い争いながらも、
結局、ずっと父が大好きで、自慢でした。
「いびつだった家庭環境が、カサンドラ
状態を引き寄せたのでは」と指摘されたり
凹んだりした時期も、ありました。
しかし、今日のこの瞬間で、私は完全に
自分の育ちを克服した気がしました。
病に倒れる前の父は、気持ちを顔に出さない
言葉に出さない、オニ瓦だったけれど
今日の表情を見て、父は不器用ながらも
私を、ものすごく可愛がっていてくれて
いたのだと、改めて感じました。
今日は、この先の私にとって、きっと
忘れられない、大切な日になる。
私の人生、これだけでも、報われました。