うちには、天使がいます。183.プラチナアレルギー、その後 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年7月。八神さんの逝去はゆかさんの日常にさらに影を落としましたが、
8日水曜日には、ゆかさん自身の病院でのカンファレンスが待っていました。
先週3日に撮ったCTの結果と、前回中止になってしまった抗がん剤治療の、
今後についての話です。

予約は、午後になっていました。
「葛西先生が午後に予約のときは、長くて大切な話になる」―
「できればだんな様も一緒に」
大切な大切な話になるのはわかっていました。
やまねこは午後に休みをもらい、ゆかさんを車に乗せて家を出ました。

やや風の強い日でしたが、病院の正面玄関前で、ゆかさんは、
「大丈夫歩けそう」と言ったので、降りてもらって駐車場に車を置きに行ったのですが、
あとで「けっきょく風にあおられて転びそうになっちゃって、警備員さんに支えてもらったよ」
と聞きました。
危ないところだったようですが、とりあえず無事に待合室に入りました。

待合室で、入院中にできた友だち、槙野さんが待っていてくれました。
ちょうど退院する日にあたっていたとのことでした。
ふたりで、尽きぬ話があるようでした。
やまねこは少し離れたところで見ていてよく聞こえませんでしたが、
もちろん共通の友だちだった八神さんのことなども話していたのでしょう。
時折名前が聞こえてきました。

やがてゆかさんは診察室に呼ばれ、槙野さんとお別れをかわしました。

診察室に入ると、葛西先生からまずCTの結果について説明がありました。
「腹水は若干増えていますが、腹膜播種、足の血栓、肺塞栓ともに縮小傾向です。
いい傾向だと思います」
引っかかる部分はありますが、少しほっとします。

続いて今後の選択肢についてお話がありました。
「抗がん剤は効果があった、と認められます。
その場合、効果がなくなるまで続けるというのが通常の選択肢ですが、
副作用がひどく、さらにプラチナアレルギーも出てしまったので、
カルボプラチンはもう続けられません」
「量を減らして続けたりも無理ですか?
それともほかの薬、たとえばシスプラチンとか使うとか(適当に知っている名前を出しました)」
「もうプラチナ系の薬を使うことはできないんです。
別系統の薬もなくはありませんが、今使ってしまうと、
逆にまたがんが再発したときに選択肢をせばめることになります」

そういうことなのだろうか。葛西先生は続けました。
「どうでしょう、今は病状も落ち着いているので、ここでいったん抗がん剤を中止して、
経過観察してみるのもひとつの手段だと思いますが」

ゆかさんは納得がいかないようでした。
とくに腹水が増えている、ということが気がかりなようでしたが、
もともとあと3回くらいで抗がん剤を休みたい、と言っていたこともあり、
けっきょく承諾しました。

「検査の通院は、月1回では多いです。だいたい2,3か月に1回くらいでいいと思いますが」
と葛西先生は言いましたが、最初はとりあえず約ひと月後、8月12日にしてもらいました。

「中止か…」
「うん、だけど抗がん剤なしでも落ち着いてるって考えようよ」
突きつけられたのは、もうプラチナ系の抗がん剤は使えない、という現実でした。

帰り道、ゆかさんは「2か月も検査あけたら、その間にぜったい悪化するよ」と、
ネガティブなことを言いました。
やまねこも答えあぐねてしまいましたが、やがてゆかさんは打ち消すように、
「いや、ぜったい悪くならない!」と言いました。
「そうだね。きっと悪くならない」根拠はありませんが、やまねこも繰り返しました。
そう信じることがすべてでした。





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昨日の昭和歌謡LIVE、喉ががらがらになってしまってたいへんだったんですが、
なんとかぎりぎり歌いきることができました。
体調管理、反省です。
次回のLIVEは7月9日、それまでには絶対に直しますね。

2024.7.09(Tue.)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「夏風のハーモニー」
OPEN18:30/START19:00/CHARGE\2,200+1D
☆やまねこの出演は5組中の最初で、19:00からの予定です。
 配信視聴はこちらから(\2,000)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

もう7月です。日増しに夏っぽくなっていくころでしょうか。
そんな歌を集めてお届けしますね。